シブヤ大学

授業レポート

2016/8/26 UP

地域の「つくる」で、未来を「創る」まち
ー島根県江津市から地域で生きる「きっかけ」を学ぶー

地域の「つくる」で、未来を「創る」まち
− 島根県江津市から地域で生きる「きっかけ」を学ぶ –
2016年7月16日


自分の仕事が街を作る、そんな姿を想像したことがありますか?
今回、授業で取り上げるのは、そんなことを感じさせてくれるまち。
島根県江津市。


先生に、三浦大紀さん(株式会社シマネプロモーション代表 / 特定非営利活動法人てごねっと石見理事)、平下茂親さん(合同会社Design Office SUKIMONO代表社員)、山口厳雄さん(協和木工株式会社代表取締役 / 株式会社石見麦酒工場長)のお三方をお招きして授業をしていただきました。



シブヤ大学の説明、そして「なぜこの授業に?」というアイスブレイクから始められたこの授業。


みなさん、それぞれの想いがあっての参加だったのでしょう。
アイスブレイクの時点で大きな盛り上がりが感じられます。


コーディネータの小田切さんが語るには、この授業が出来上がるきっかけとなったのは、先生の三浦さんとの出会い、そしてその三浦さんの考え方にあるようです。


では、その三浦さんとはどのような人物なのでしょうか。


◆  三浦さんのお話


「地域に大きな可能性があるのでは」と考える三浦さん。


彼が代表取締役を務めるシマネプロモーションでは、「それぞれが持つ本当の魅力とはなんだろう」ということを考え、「魅力的な地域をつくる“キッカケ”を生み出す」企画・宣伝の仕事をしています。
様々なプロジェクトを通し、島根という地域を中心に、その土地にしかない魅力を掘り出しています。


そんな、三浦さんは、実に興味深い経歴をお持ちでした。
国会議員の秘書、NGO職員。
世界平和を考え、動き始めた三浦さんですが、その先に見つけたものは、小さな地域の魅力でした。


・  その場所にしかない
・  大事にされている
・  人間らしさが感じられる
・  共有できる
・  そして、どこか自分勝手


そのようなモノ・コトが溢れている島根。
その中の小さな街である江津市。
そこはどんな場所なのでしょう。


◆  地域の課題と可能性 – 島根県江津市を紐解く –

島根県江津市。
「東京から一番遠い市」として、地理の教科書にも載ったことのある街でした。


島根県の人口が約70万人なのに対し、江津市の人口は約2.5万人。
高齢者率の増加と急速な人口の減少。
地場産業の低迷や工場の閉鎖に伴う雇用の場の喪失。


そんな島根の小さな街の江津市が、今、目指しているのは山陰の「創造力特区」です。
「企業誘致」から「起業誘致」への考え方の転換。
そこから生まれた「江津市ビジネスコンテスト」通称Go-con(ゴウコン)、地域の活性化に取り組むNPO法人「てごねっと石見」。 


特に、2010年より始まった「江津市ビジネスプランコンテスト」では、市・商工会議所・商工会・信用金庫・NPO法人が一体となって、参加者のサポートを行い、若者が帰って来れる地域づくりを行っていました。


 


◆  ビジネスコンテスト受賞者のお話


 


合同会社Design Office SUKIMONO 代表社員 平下さん


 


東京から一番遠い街のデザインオフィスであるDesign Office SUKIMONO。
平下さんは、2011年に江津市にUターンをし、その街で働き始めました。
「ルーツある安心感」を創り出すと語ってくださった平下さん、そこで大切にしているものがありました。


・  古着や木材、空き家を再利用し、そこに付加価値をつけることにより、そこに温かみが生まれる
・  東京でうけるデザインをつくることではなく、ここ(江津)で生活する人たちを豊かにしていくプロダクトをつくるということ


そして、平下さんのお話の中ででてきた
“内需=その土地のものをつかい、その土地を豊かにしていく”
という考え方が、この授業の軸のように思えました。


協和木工株式会社代表取締役/株式会社石見麦酒工場長 山口さん


 


江津市でお酒作りに取り組む山口さん。
それは、大学時代の菌類の研究、そしてそこから生まれたお酒作りへの想いがきっかけでした。
ある市役所の方に「地ビールを作りたい」と相談に行った時に大反対された山口さん。
そこで、石見麦酒の事業について考えられたそうです。


・  ビールではなく発泡酒
・  酒造メーカーが無い街に行こう
・  広さは約9坪の工場で小さく製造
・  店舗は持たない
・  女性向けのデザイン
・  地域を巻き込む(地元の農産物を使用)


地域の農産物を副原料に使用し、生産者の名前をラベルにプリントすることで、より地域に寄り添った商品となり、安心と繋がりが生まれます。
ここでも“内需”の、地域のなかでの繋がりの考え方がありました。


◆  まとめ


江津市が商工会議所、商工会、信用金庫、そして、NPOと推し進めるビジネスコンテストという一つのステージ、地域ならではの横のつながり・ネットワーク、そして、その土地のものを大切にし、その土地を豊かにしていくという“内需”の精神。


江津市という地域で働くことにより、生きるということを感じ、そして、その土地の人たちを含めた自分たちの未来を作っていけるように感じました。


 


今年のGo-con(江津市ビジネスコンテスト)で、また、そのまちがどう変わるのか非常に楽しみです。


(レポート:吉開崇人/写真:笹尾真里)