授業レポート
2016/8/5 UP
和の香りをまとう
~自分だけの匂い袋づくり
みなさんは、『和の香り』ときいて、どのようなイメージをもたれますか?
私は思わず考えこんでしまいました。
香りというと西洋の香水やアロマのほうが、ぱっと思いつく気がします。
でも日本の香りの文化は、香水が輸入されるよりもっと昔から生活に浸透していたのです。
今回、創香家・香司の今井麻美子先生をお迎えし、
和の香りについてのあれこれを教えて頂き、
夏の涼しさを感じる匂い袋つくりをご指導いただきました。
■和の香りの来歴は?
和の香りは、なんと1300年以上前、仏教の伝来とともに、
つまり『仏様』のためのものとして伝わったのだそうです。
平安時代になると、調香した香りを薫き比べて遊ぶ薫物合わせが生まれ、
香りで楽しむことが始まりました。
その後も時代の変化にあわせ、暮らしの中に香りを楽しむことが浸透していきました。
ずっと昔から、日本には香りを楽しむ文化があったんですね。
■和の香りの元ってなに?
和の香りを思い浮かべてもらうのには、匂い袋やお線香を思い出していただくのが早いかもしれません。
でも和の香りってそもそも何が原料なのでしょうか。
私は恥ずかしながら、まったくわかりませんでした。
和の香りは、沈香や白檀と呼ばれる香木と、丁子、桂皮、龍脳など20種類近くのの漢方薬で使われる香原料を合わせてつくられます。
漢方薬で使われるものが香りの原料になるなんて驚きでした。
人によっては、匂い袋を枕元においておくとよく眠れるらしいとのこと。
漢方薬でも使用される自然の物しか使っていないなら、なんとなく納得ですよね。
■夏を涼しく感じる匂い袋をつくろう
香りにまつわる講義が終わったところで、早速匂い袋をつくります。
お題は『夏を涼しく感じる匂い袋』なので、まずはそのイメージを2班に分かれてそれぞれ2つずつ出し合いました。
・森林、日蔭、滝(昼)
・すいか、甘い(おやつ)
・竹林(朝)
・清流(夜)
どれもこれも夏の涼のイメージですね。
この中から自分の好きなイメージを選び、調香開始です。
香料の割合は、先生に教えて頂いているので、個人個人で量り混ぜていきます。
同じイメージを選んだ人は、同じ分量をいれているので同じ香りになるかと思いきや、比べてみると、香りがそれぞれ違うんです!
強かったりやさしかったり、甘かったりスパイシーだったり。不思議ですよね。
その後、自分のイメージにするための香りを加え、香りを仕上げます。
そして出来上がった人から、今度は布袋や紐を選び、作った香料を袋にいれて完成!
色とりどりの袋や紐を先生が用意してくださったので、ここでも人それぞれの好みがわかり面白かったです。
選ぶ時 → 自分が好きな香り
つくる時 → 好き嫌いで選ばない
先生曰く、自分の好きなものばかりでは香りは成立しないし、香りは人なり、人と同じで甘やかしただけの香りではよい香りにはならない、そして、特定の香りが突出しているのではなく、和の香りは円のように丸くバランスがとれていることが大切、とのこと。
先生のこのお話しを伺って、自分の気持ちにもいえるような気がしてちょっと目が覚める思いでした。
■さいごに
みんなで出来上がった匂い袋を持って写真撮影。
どれもこれも素敵な仕上がりです。
みなさん、試行錯誤されていたようでしたが、その過程も楽しんでいただけたようです。
作業をみている私も嬉しく思いました。
『香りをつくる』というのは、自分自身との対話から、と先生がおっしゃっていました。だからこそ、同じ材料や分量で作る香りも異なるものになるのかもしれません。
日本に古来より伝わる、和の香りという素敵な文化をもっと多くの人に知ってもらえたらいいなと思いました。
(写真&レポート:染島順子)