授業レポート

2016/6/30 UP

私は能楽師!
~20代役者が案内する能への入口~


「“能”ってなあに?」という疑問に対し、
20代の能楽師・武田祥照先生(以下、武田先生)に、
初心者向けに、能とは何かということや21世紀の現代の状況まで、
若手役者さんならではの視点で分かりやすくお話いただいたのが今回の授業です。



■能ってどんなもの?
先生の自己紹介のあと、早速、謡と舞を披露してくださいました。
親しみやすい雰囲気から一変、表情が演者に変化して
講義室が一瞬で能の舞台に!
思わずその世界に引き込まれてしまいました。



能は14世紀頃、室町時代に出来たミュージカル(!)とのこと。
そして世界的にもプロが伝承している伝統芸能として世界最古で、
上演が途絶えたことがないのだそうです。
バレエの『白鳥の湖』が18世紀に上演されたことを考えると、なんだか誇らしく思えますね。


■能+狂言=能楽
私は、能と狂言は別物と思っていたのですが、
『能楽』とは“能”と“狂言”のことなんだそうです。根っこは同じということですね。
このふたつの違いは、わかりやすくいうと物語の種類です。

能→シリアス
狂言→笑い

能と狂言は、スポーツに例えると本業はサッカーだけど、フットサルも出来る、
本業はフットサルだけどサッカーもできる、というような関係だそうです。




■歌舞伎との違いは?
それでは、能と歌舞伎の違いはなんだと思いますか?
成立した年代や創設した人などの違いはもちろんですが、
最大の違いは、

能楽→仮面をつける
歌舞伎→化粧をする

ということでした。
スポーツに例えると、野球とサッカー、
同じ球技でも全く違うもの、それと同じだそうです、


■女性の仮面、年齢が若いのはどちら?
さて、能の最大の特徴ともいえる仮面。
正式には『面(おもて)』というそうです。


先生が実際の面(おもて)をいくつかみせてくださいました。
その中で、年齢が異なる女性のものがあります。
表情はほぼ同じにみえるふたつの女性の面(おもて)を見比べて
どちらが若い女性のものかあてるクイズがありました。



一方の面(おもて)の色が白い、ということ位しか目立った違いはないような?
いえいえ違いはありました!
面(おもて)を横からみると、一方は髪がひとまとまりで描かれているのですが
もう一方は髪がひとまとまりでなく、何本かの髪が線として描かれています。
ここにヒントが!

『髪の乱れは心の乱れ』

若い娘はまだ恋を知らないので、心が乱れることもありません。
しかし恋を知った後、結婚する前後の女性はどうでしょうか。
恋によって心が乱れることも多くなる…それを髪で表しているそうです。
なるほど~!と納得。
ちなみに”般若”の面(おもて)の性別は女性です。
こわい中に悲しみを潜ませているのが般若だそう。
ちょっと切ない気がしました。


■能を観るポイントは?
では、能はどうやって楽しんだらよいのでしょうか。
いくつかのポイントがあるようです。

・多くの余白が残されている舞台を楽しむ
・本を読むように舞台を観る
・演者とお客様が想像力で一緒に舞台の余白を埋める
・演目を選ぶことも重要!

能の舞台は、不要なものを限界まで削ぎ落として作られているので、
そこに出来た『余白』の部分を演者とお客様ひとりひとりの想像で補い楽しむことで
ひとつの舞台が出来上がる

と武田先生。

同じ舞台を観ても、観客それぞれが自由に想像し、
感じてよいということなんですね。
能って難しいと思っていたのですが、
もっと気楽に観ていいものなんだなぁと思いました。


■普段は何をしているの?
能とはなにか、少しわかったところで、
じゃあ能の演者さんは、公演以外に普段何をしているんだろう?
一般の私たちからみたら、そう思いますよね。
そんな疑問にも答えてくださいました。

① 公演(年間130~140公演)
② ワークショップ(年間30~50回)
③お稽古・一般向けレッスン

一週間のスケジュールも公開してくださいましたが、
公演や自分のお稽古、お弟子さんへのお稽古、一般向けのレッスン、
ワークショップなど、予定がびっちり組まれていました。
最近はワークショップなどの効果で、
能を観たり、レッスンを希望したりする人の年齢層が広がったそうです。

また公演は1日1回のみ。
演劇や歌舞伎のように同じ演目を何日も行うことはないそうです。
(ごく稀に2~3日間公演することもあるそうですが)

1つの演目の舞台はその日1度だけ!
まさに一期一会ですね。


■さいごに
授業の最後は、武田先生の後に続いて謡をみんなで謡い、
すぐ近くの国立能楽堂までお散歩をして資料展示室を見学しました。
(ここは無料で誰でも入ることができるそう!)



能の歴史や歌舞伎との違い、面(仮面)の意味などとてもわかりやすく説明していただき、
遠いなぁと思っていた能の世界が少し近くなった気がします。
観る場所も意外に近くにあるんですよね。(都内には能楽堂が12もあります!)

何より、舞台を自由に想像して楽しむ、というのがとても印象的で、
今度は演目を選んで、観てみたいと思いました。



(レポート:染島順子/写真:池田愛)