シブヤ大学

授業レポート

2016/6/30 UP

子育てしやすい地域をつくる
〜「ママプロぐんま」の取り組みとこれから〜


群馬を子育てしやすいまちにしよう!と「ママプロぐんま」を立ち上げた都丸一昭さんが今回のまちの先生です。「都心から新幹線で50分の近さで、待機児童の問題も少なければ、土地も安い。都市としてのインフラも整った、コンパクトで暮らしやすい街。あとは“仕事”を補完できたら、子育て世代の定住人口をもっと増やせるはず。」と話し、東京と地方を結ぶ拠点として高崎を選び、テレワークという働き方でママたちが活躍できる場を作り出しています。



ママプロぐんまの取り組みは、
・仕事の8割は東京で受注し高崎でテレワークをする。
・高崎で2人目を産みやすい地域にしていく。
・東京圏の子育てテレワーカーと連携し、高崎に仕事を持ち込む。
・高崎の空き家を利用し、子育てサロンとテレワークスペースを作る。
・地元じゃない子育て期(特に3歳までの子どもをもつ)の人たちが孤立しないように、子育てサロンや神社での「あそびば」やイベントを提供する。
・中小企業がテレワークを導入できるように協力する。
・時間と場所を選ばずに働くことができる人が増える。
・子育て期テレワーク支援を通じて、選ばれる地方都市へ。
・仕事しながら在宅育児ができ、子育て期にも活躍できるように。
・新幹線50分で通勤できることを生かし、東京圏を補完できるような地域作りをめざす。

・育ってきた環境によって人が持つイメージは異なる。例えば、すがすがしいと聞いて広がるイメージは?
 都丸さんの場合「冬が終わって春が来る頃の雪がとけて小川ができ水面がキラキラしている感じ」だそうで、私の場合は「よく晴れた日の早朝のまだ空気が澄んでいる感じ」です。

・「理想の場所のイメージとは?」のお題で、グループワーク。
  田舎。自然がある。団地などの中でも近所の付き合いがあり共助できるところ。通勤に便利など、様々な意見がでましたが、みんなが持つイメージはかっちりとしたものではなく、ふわっとしている印象でした。



ママプロぐんまの取り組みはどれも素敵なものばかり、核家族化が進んだ今の社会の中で必要とされていることを強く感じられました。しかし、一番興味深かったのは都丸さんが今の活動に至るまでの流れでした。
中学校卒業時には就職を決め東電学園に入学、18歳で東京電力に入り働き始めるがそこでの生活に希望を見出せなくなり、22歳で慶応大学SFCに入学。いの研で学びつつ、フラメンコをしたり、インドに修行に行ったり、自給自足を目指すイベントで廃棄率200%となる痛い思いもしながら26歳で卒業。卒業と同時に起業。たくさんの恰好いい大人に出会い、学生向けのフリーマガジンLilyを制作、憧れの大人に直接出会えるきっかけを若者に提供。取材中に出会ったご縁でマンゴーピューレの販売をしたことも。出産に立ち会いたい一心で寝不足の中レンタカーを運転し群馬まで帰ったが自損事故を起こしてしまい車は大破。自身に子どもが生まれたのをきっかけに自分の生活も見つめなおし、子育て支援に力を入れるようになりママプロぐんまを発足。挑戦し失敗してもまた挑戦し活動を続けていける、そんな風に自分を育ててくれた母への感謝の思いも語られました。

成熟した社会となったいま、幸せのものさしがなくなってきている。ひとつの場所にこだわらずにいろんな拠点を持てるといい。通勤に使う時間を他のことに使いたい。例えば、1日往復4時間、1年で1000時間。1000時間あれば何ができるか考えてほしい。これからは個が何かを作りやすい時代になっていくのではないか。こう話すと、都丸さんは最後に、一番大切にしたいことは、「挑戦して失敗しても、また立ち上がることができること」。愛着形成と自己肯定感醸成があればPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを回し挑戦していけるのではないか。そうすれば「世界を担う人材を生み出す」こともできる。国が地方創生に力を入れている今、国家予算を呼び水に地域作りを進めていきたい。と締めくくりました。

「ママプロぐんま」と聞いてはじめはその言葉からママをサポートする団体としかイメージできなかったので、目指しているのは「世界を担う人材を育てる」と言われても、それはまた別のことじゃないのかなと思いました。お話を伺ううちに「直接はママをサポートしているけど、それはすべて子どもたちが愛され強く成長することを目的に行っていることなんだ」と活動のつながりを感じることができました。これからは特別な才能を持った人でなくても、時間と場所を選ばずに働き、ライフステージのどの時期でも活躍できる社会になっていくのだと希望が湧く楽しい授業でした。



(レポート:青木佳子/写真:榎本善晃)