シブヤ大学

授業レポート

2016/2/26 UP

“あったらいいな”を作っちゃおう!~10年後の渋谷に本屋を作るなら?

2025年、シブヤには色んな本屋が出来ました。


憧れの職業の人が読んでいる本を読める本屋(制服×本屋)、


関わる人全てが同じ血液型でその違いを楽しむ本屋(血液型×本屋)、


紙の材料を育てるところから本を作ることができる本屋(畑×本屋)、


砂浜に埋めた本を時間内掘り放題の本屋(海の家×本屋)などなど…


どれも、今まで見たことない個性的な本屋ばかりですね!


 


これらは今回の授業で、参加者の皆さんがチームを組んでキーワードを引いて、新しい本屋を作るというグループワークから生まれた本屋たちです。


 


なんだか、「本屋」ってまだまだ可能性ありそうじゃないですか?


 


授業が始まり、まずは講師の内沼晋太郎さんにお話を聞きました。


 


 


内沼さんってどんなことをやっている人なのか…


 


内沼さんは自分の仕事を「人と本との出会いをつくる仕事」だと仰っていました。


古書の中身が見えないまま一説の引用文を見て本を買う「文庫本葉書」


カフェの中に本屋を作ってもあんまり売れないので、本をカフェメニューにしちゃった「文庫本セット」などの企画や、本屋以外の場所に本の売り場を作る仕事をされています。


そして、昨年グッドデザイン賞を受賞したB&Bという本屋を立ち上げた方でもあります。


生徒さんからは、「内沼さんを知らなくても、関わっている仕事は知っているのがすごい!」という声が挙がっていました。


 


本屋の仕組み


 


2013年までは、本屋の店舗は減っているけれど、店の面積は増えていたそうです。


つまり、本屋の大型化が進んでいるということです。


皆さんはなぜ、発売日に、どこの本屋にも同じ本が並んでいるか知っていますか?


本の流れは出版社→取次(問屋)→本屋となっています。


本屋には、発注しなくても問屋から本が送られてきてそれを並べる「自動配本」という仕組みがあるんです。


だから、問屋から沢山の本屋に向けて発売日に本が店頭に並ぶように送られてくるわけです。


 


新しい本屋のカタチ


 


しかし!B&Bでは、この自動配本を雑誌以外は断って1冊ずつセレクトして店頭に並べています。


大型書店に対して「この本が欲しい」「こういう本が欲しい」では敵わないぶん、「なにか面白い本が欲しい」という人の欲求が叶う所にしようとしました。


コンセプトであるビールが飲めたり、店頭にある本棚も売っていたり、毎日イベントが開催されていたり。


本の利益率は約20%ととても低く、本を売るだけでは都心部の高い賃料を払うことはとても難しいのです。そうして沢山の本屋が閉店していくなか、内沼さんは“かけ算”して本以外のもので利益を補う新しい本屋のカタチを創りだしました。


 


新しい本屋を作ってみよう!


 


今回のグループワークに向けてたくさんのキーワードが用意されていました。


「タイムカプセル」「結婚」「相撲」「血液型」「AM2:00」など…


本屋に関わりあるの!?というようなキーワードたち。


これをランダムで引いて、本屋と掛け合わせて新しい本屋を作ろうというワークを行いました。


それで出来上がった本屋たちが冒頭の個性的な本屋たち。


他にも、本の魅力を語りバトルし横綱を目指す本屋(相撲×本屋)、廃校を利用した本屋(エコ×本屋)など色んな魅力的な本屋ができました!


10年後の2025年にオープンという条件だったので、オリンピックを終えた国立競技場が人口の海になってたり、小学校が廃校してたり、今実現が難しいものも関係なく、自由に考えを広げたワークショップとなりました!


 


最後に内沼さんからこんなメッセージを頂きました。


「本屋というのは、人なんです。最近は雑貨やカフェとの複合店が増えていますが、このトレンドは長続きしないと思います。立地や競合を調査するのはもちろんですが、なによりその本屋で働く人が一番好きだったり、得意だったりするものを掛け合わせるべきです。」


 


これをやれば、売り上げが上がる!


というものではなく、自分の好きなもの、得意なものをくっつけてその魅力を本気で伝えたいからこそ、個性が出ていくのかなと思いました。


10年後の渋谷の街がどのように変わっていくのかわかりませんが、今までの仕組みを変えていくのは個人で。


これからもっと本屋の新しいカタチ、魅力を伝えられる本屋ができれば良いなと思いました!


 


(レポート:武富紗弥子 写真:天住貴子)