シブヤ大学

授業レポート

2016/2/10 UP

人に会いに行く旅をしよう。@千葉県 銚子市

8:00
渋谷発、いざ、銚子へ!
バスの中ではコーディネーターの小足雄高さんからの「銚子クイズ〜!」
全問正解者には「ミニ大漁旗」贈呈。いいな、いいな!
わいわいガヤガヤ、あっと言う間に銚子に到着。

10:30
銚子電鉄への深い愛、知名度アップに奮闘中!
銚子電気鉄道株式会社 鈴木一成さん



幼い頃から電車が大好きだった鈴木さん。 地域密着型の銚子鉄道の魅力に魅せられ、「どうしても入りたい!」と、当時住んでいた東京から4回も銚子鉄道に通い、頭を下げ続け直談判。
その熱意が伝わり、無事入社!経理、宿直、運転、広報、撮影立ち会い、、などなど、業務は多岐にわたります。大変そうなお仕事ですが、鈴木さん、なんだかとっても楽しそうです。

車内では、車掌さんと乗客の方が世間話で笑い合っていました。


かと思えば、車掌さんは次の駅で運転手さんに早変わり!かっこいい!!



車窓から見えるキャベツ畑では、収穫中のおじちゃんが電車に向かって手を振ってくれました。
まるでテーマパークのよう! お〜い!!


遠くから来るファンも多いそうで、平日よりも土日の方がお客さんが多いそうです。
電車に乗りに行くために電車に乗る。なるほど、ここなら納得です。

「銚子鉄道が愛されていることが、嬉しいですね」

と、鈴木さん。
うわあ〜〜、なんてあったかい電車なんだ!

12:15
ハーブガーデンで昼食!パスタとオムライスをいただきました。
食後にはおいしいハーブティも。

13:45
まちに足りないものを自分でつくる
株式会社パームデザイン 池田健一さん


池田さんは、もともと東京のゲーム制作会社やデザイン会社などで働いていましたが、子育ての環境を考え千葉に戻り、奥様の実家の廻船問屋を継ぐ事を決意しました。

「午前中にハマ行って、長靴のまま戻って、午後はここでデザインやって。」

現在はそれらの仕事の他にカフェの運営、撮影コーディネートなど、池田さんの肩書きは多岐にわたります。

「いっぱいやってすごいと言われるんですが、やりたいことをやってるだけで…。臆病にならずに色々やってみる人が増えるといいなと思います。商売って、複数やっても上手くできるよって。ダメだったら、ひけばいいと思っています。」

どうしても、デザインなどの仕事は「東京で」と考えがちで、実際千葉から東京に出る若者も多いと聞きましたが、池田さんのような先輩がいることによって、ここに留まる若者が増えそうな気がしました。

15:45
こんなに近くにイルカ?!自らの感動をより多くの人に届ける仕事
有限会社銚子海洋研究所 宮内幸雄さん


もともと、水族館でイルカの調教をしていた宮内さん。
30年程前、漁師さんに誘われて船に乗ったところ、銚子の海で800頭もの野生イルカの群れに遭遇し、衝撃を受けます。
その感動を伝えたくて、独自で調査をし、1998年からイルカクルーズをはじめました。

「イルカは日本と東南アジアの沿岸しか見られないんです。しかも、全世界で80種類いるイルカのうち、半分の40種類は日本で、そしてその半分の20種類が、銚子で見られるんです」

そんな貴重な場所がこんな近くにあったなんて!
残念ながら、私たちの船からはイルカを発見できませんでしたが、3頭のスナメリが一瞬顔を出したそうです。見逃した!4〜6月には90%の確率で見られるそうなので、またその時期に行きたいですね。

宮内さんの会社で働く大富さんは、大阪出身。銚子で働いて8年。どうしてまた、大阪から銚子に?

「とにかくイルカとクジラが大好きで、トレーナーになりたいと思って学校に通いました。その実習先として、マレーシアのボルネオ島に行ったんです。クルーズしたときに見た野生動物の魅力にハマって、これだ!と。それで、トレーナーの夢はすっぱり辞めて、ここに研修生としてお世話になって、こちらに入れていただくことになりました」

現在は宮内さんとご結婚され、昨年末にはお子様も誕生しました。イルカが繋いだご縁ですね!



19:00

銚子のおいしいお魚などを堪能!どれもこれも美味しすぎて、持って帰りたい!



そして温泉でふやける・・・。ああ、極楽、極楽。


2日目

9:00
今の生活スタイルに合わせて変化させていくことで伝統産業を守り続ける
青柳畳店 青柳健太郎さん


青柳さんは、東京のデザイン学校で学んだあと実家に戻り、青柳畳店の4代目となりました。
青柳さんが畳の良さを紹介していく中で特に印象的だったのは、地域の子供達に剣道を教えた時のエピソードでした。

「畳がある家で育った子とそうでない子は、空間把握能力が全く違う事に気付いたんです。たとえば竹刀を振って、当たる前に避けてねって言っても、畳がある家で育った子はビクってなって避けるんですが、そうでない子は避けられないんですね。人との距離感は、畳のある家で自然と身につくものだったんだって。畳屋だからわかったんです」

平成元年に6000軒ほどあったい草農家。いまでは540軒をきってしまいました。
こんな素敵なものを、なくしてしまってはいけない!と、畳に使えない長さのい草を、バッグや名刺入れなどの小物に加工したり、有名家具デザイナーチームと共同で家具を制作したり、日本橋の三越で畳を使ったディスプレイを展示したりと、畳の新しい可能性を生み出し、広めていく活動をしています。
畳を使ったピクニックシート付きのバッグは女性参加者に大人気!

畳ブームが、青柳畳店から誕生しそうな予感です。

10:45
国内唯一の手づくり風船工場と技術継承
伊藤房男さん・陽子さん、伊藤貴明さん




国内唯一の手づくり風船工場「伊藤ゴム風船工業所」。
手づくり工場ならではの、オリジナル風船づくりを頼まれることも多いそうで、有名なTV番組で取り上げられたこともあります。

子供達のみならず、大人も思わず笑顔になってしまう「風船」。それらのエピソードを聞きながら、ご夫婦の愛情あふれる風船作りそのものが、まわりの人たちを笑顔にしていると分かりました。

そんな風船工場で昨年11月から働いている伊藤貴明さんは、「日本仕事百貨」を見て入社した方で、同じ名字ですが息子さんではありません。


以前は青年海外協力隊としてフィリピンで車の整備を教えるボランティアをしていました。英語を習得し帰国後、外資系の会社に就職。ところが、フィリピンで感じた優しさや思いやりを持って仕事に取り組む魅力を忘れられず、伊藤ゴム風船工業所に入りました。

「変わった形の風船が出来るのは、手づくりならではの魅力なので、長く守っていきたいですね。将来的には、風船づくり体験など、観光名所としても成り立って行けるような施設にしたいと思っています。」

ご夫婦の笑顔を見ていると、思わず「ずっと残して欲しい!」と応援せずにはいられない、あたたかみの溢れる風船工場。

新しく入った同じ名字の伊藤さんが、この魅力をもっと多くの人たちに発信しようとしています。

12:30
魚を知り尽くした魚問屋直営店でいただく絶品の海鮮丼。
一山いけす 宮川敏孝さん


「船の上で魚をさばいて『やっぱ釣れたてはうまいね〜』って、TVで見たことあるでしょ?実は違うんですよ。釣れたての魚は漁師と戦ってストレスが溜まってるから、おいしくない。」

えー!!!一同驚きです。

「ベストな水質、水温の中で、3~5日泳がせてストレスをなくしてから、出すんです」

魚を知り尽くした魚問屋のご主人。直営店のお店は、「いつ来ても混んでる」らしい、地元でも大人気の名店です。

実際に海鮮丼やお味噌汁、天ぷらをいただく。う〜ん、どれも美味しい〜〜!
窓の外には海猫たちが食べ残しを狙っていました。あげないけどね。(よく知ってるなあ)



15:00
思い出作りを手伝うのは、現地の人なんです
株式会社観光交通プロデュース 向後功作さん


向後さんは銚子電気鉄道在職時、広報担当としてあの「濡れせんべい」をつくった方です。ご存知の通り濡れせんべいは大ヒット!銚子電鉄の知名度をあげた仕掛人です。そして、冒頭に登場した鈴木さんを採用した方でもあります。

向後さんは、銚子電鉄に在職しながら千葉大学に通い、「まちづくり」を学びました。退職後はその経験を買われて銚子市観光プロデューサーとして活躍。退任後、満を持して株式会社観光交通プロデュースを設立しました。

「アイドルみたいな人のところに会いに行きたいって、思いますよね?新しいことを招くのは、人なんです。景色を見るだけなら、それで終わってしまう。思い出作りを手伝うのは、現地の人なんです」

まさしく「人に会いに行く旅をしよう。」ですね。

15:30
みんなで作ったガイドブック「銚子人」
発起人 力武若葉さん


今回の旅を一緒にまわった力武若葉さん。
現在は仕事で銚子には住んでいませんが、自身の故郷である「銚子」について、

「知らないから、知りたかった」

というピュアな想いでガイドブック制作プロジェクトを立ち上げます。
なんと、プロジェクトはFacebookで呼びかけられ、皆、初対面。しかも、中心メンバーの4人中3人は銚子に住んでいませんでした。その後、クラウドファンディングで資金を集め、見事達成!ワークショップを行い、銚子の人たちみんなで作ったガイドブック。とっても読み応えのある一冊です。

今回の参加者全員にも配られ、もっと「会いに行きたい!」内容になっています。

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今回出会った人たちの仕事に対する熱いまなざしに、私たちは多くのヒントをもらいました。
もしかするとこの2日間の中に、今後の人生を左右する出会いも含まれていたかも知れません。

向後さんの、
「景色を見るだけなら、それで終わってしまう。思い出作りを手伝うのは、現地の人なんです」
という言葉が、今回の旅全体を物語っているような気がしました。

それは、「銚子」で出会った人たちのみならず、今回の旅を一緒に過ごした25名のみなさんも、まさに「人に会いに行く旅」の「人」でした。
旅に出る時、「どこに行く?」を考えがちですが、「誰に会う?」なら、旅に出たい理由は何個も出てきそう。
そうか、「旅」の醍醐味はこれだったんだ!

さて、次は誰に会いに行く?

(レポート:吉川真以)