シブヤ大学

授業レポート

2016/2/1 UP

卒業、出産、移住...
ライフステージにあわせて変わる”わたし”の社会課題

あなたの街のいいところはなんですか?”
そんな質問をされたとき、あなたならどう答えますか?
海がきれい、食べものが美味しい、地元の人しか知らないような素敵なカフェがある。
どんな街にもいいところがあって、「住めば都」とは、まさにその通り。

本日のまちの先生は「自分が地元を自慢できる街にする」をコンセプトに『コレカラ99』を立ち上げ、千葉県の九十九里を活性化する事業にも関わり始めている藤田香織さん。

そもそも『コレカラ99』を始めるまでに“卒業”“出産”“移住”とライフステージごとに自らが感じた社会問題を解決していけるよう、持ち前のバイタリティーとデザイン力で向き合ってきた藤田さん。そんな彼女の話は大学時代のあるものとの出会いから始まります。



【First Stage】社会活動は色があってよい ~社会活動×デザイン~
藤田さんはある雑貨屋さんで運命の出会いを経験します。
それは『ミスターフレンドリー』というキャラクター。カラフルなお店の商品にはすべて『世界中の人びとにハッピーを届けたい!』というタグが付いています。

気になって調べてみると人間も、動物も、樹木や植物も、すべての自然が仲良しでいたい!というコンセプトを基に作られており、どの商品も地球にやさしい素材を使用しています。

いわゆる「エコ商品」なのですが、当時のエコ商品は生成りのものがほとんど。色があまりなく、正直に言ってしまえば可愛くない。大学でデザインを学んでいた藤田さんにとってはなおさらです。エコ商品は環境のために我慢して買うもの。そんな発想すらあっただけに、ミスターフレンドリーとの出会いはまさに衝撃的でした。早速、販売元である会社になにか自分にできることはないかと連絡。専務に熱意をお伝えしたところ、「会社をやってみるか!」と言われ、当時23歳でデザインやアート、音楽を取り入れながら自分も地球も心地よくなれるコトやモノを企画する、『フレンドリーデーインターナショナル』をスタートさせました。

フレンドリーデーインターナショナルのミッションは2つ。
① 『4/14のフレンドリーデー 世界中みんなが仲良くする日』の認知活動
② リユースTシャツの制作、販売をし、活動費を捻出すること

4/14がフレンドリーデーだということを知っている人はあまり多くありません。
またリユースTシャツの販売もファッションとして取り上げてもらうことを目指して活動をしていきますが、なかなかファッション業界は取り上げてくれません。
しかし、そんな中、パリのコレットでリユースTシャツのキャンペーンを行えることになり、4/14のフレンドリーデーの認知も広がりました。

デザインの力が藤田さんの社会活動を変えていきます。

【Second
 Stage】結婚→移住→出産。変化する環境。


結婚し、農業プロデュースをしている旦那さんの仕事の関係で千葉県九十九里へ移住した藤田さん。今まで代官山で仕事をしていたため、九十九里での生活はなにもかもが東京と異なります。授業が始まったのは夜の7時。その頃九十九里は真っ暗で10メートル先も見えないそうです(笑)

そんな劇的な環境の変化の中、妊娠、初めての出産をするのですが、なれない土地での不安から寝たきりになってしまいます。そんな寝たきり生活の中で『プルミエール 私たちの出産』という映画に出逢います。途上国の妊婦の出産を取材した映画で、医療設備が整っていない環境での出産を目にした藤田さんは自分がいかに恵まれているのかを知り、同時に頼る人もいない環境で出産を迎える、妊婦たちに想いを馳せます。
そして『ホワイトリボン活動』という途上国の妊婦を守るための活動を知り、
ファッションを通じて途上国や被災地の妊婦を支援する『MODE for Charity ~babies and mothers』をプロデュースすることに。富永愛さんなど多くの著名人が賛同し、企画を始めた当初よりかなり大きなイベントとなりました。
その後、東北のママたちも応援したいと『to motharsみちのく仙台」へと発展させていたところに東日本大震災が起きます。

【Third Stage】地元に向きあう ~田舎にしかないもの~


多くの帰宅難民者が出ていたなか、幸いにも九十九里にいた藤田さん。家族で時間を過ごすことができるも、2日間の停電と断水。しかし、そんななかでも畑に行けば食べ物があり、田舎は強い!と実感します。家族を置いて東京へ行くことにも抵抗があったため、そこから改めて地元に向き合う時間になりました。
すると、近所のカフェでリユースTシャツ活動を知っている方と出逢い、九十九里でも販売をしてもらえないかとお話が!実は九十九里には移住者が多く、またサーファーは環境問題の意識が高いので絶対に需要があるとのこと。東京でしか仕事ができないと思っていた藤田さん。きちんと向き合えば見えてくる地元の魅力に気がつき始めます。



【This Stage】九十九里の未来を創る ~革命はカフェからはじまる~

近くに住む人たちと九十九里の未来についてブレストする日々が始まりました。
カフェで話していく中で自分が地元を自慢できる街にしよう!と『コレカラ99』が動き出し、一人ひとりが地元のプロデューサーとして様々なプロジェクトを立ち上げていきます。

産後ケア、セルフケアインストラクタ―の若菜ひろみさんは『産みたい街』になるよう、妊婦のサポート行い、自治体の公費で受けられることを目標にしています。

また仕事をリタイアしたけれど、なかなかネクタイが捨てられないという声から生まれた

『RETIES(リタイズ)』。ネクタイにも第2の人生を!をコンセプトに、ネクタイから子供用の蝶ネクタイに生まれ変わります。おじいさんからお孫さんへのネクタイのバトンは、想いも一緒に引き継がれていきます。

「こんなに素敵な人がいたんだね!!」と、地元のみんなで話すそうです。ないものばかりに目を向ける生活から卒業し、見えなかった地元の良さが見えてきたからでしょうか。

(実はフランス革命もカフェでの話し合いから始まったそうです!)
何百年もの時を経て、九十九里にも革命が起きました。

「想いを伝えることしかしてこなかった」藤田さんは最後にこう言いました。
社会の問題を自分のことと考え、想いを伝えること。
自らが体感した想いは共感を生み、そこからアクションが起きていく。
社会問題が“わたしの問題”になったとき、それは目標になるのかもしれません。



(レポート:伊藤扶美子)