シブヤ大学

授業レポート

2016/1/21 UP

「森」をつくる。2015
~明治神宮の森でどんぐり拾い 10~



気持ちの良い快晴の下、記念すべき10回目のどんぐり拾いの授業が開催されました。
この授業はシブヤ大学設立から唯一、毎年継続している授業です。
今回は10回目のアニバーサリーイヤーとなり、過去に参加された先輩方にもお越しいただきました。
授業では、明治神宮の歴史や参拝の方法を聞きながら境内を散策し、昼食を挟みながらどんぐり拾いを行いました。

前半最初のオリエンテーションでは、目をつぶって何種類の音が聞こえるか、周りの音に耳を澄ませました。聞こえてきたのは、鳥の鳴き声・電車の音・人の足音・葉の音…。
目をつぶって他の感覚を集中させることで、明治神宮の森の存在がぐっと近くなった気がしました。 
そして「五感を使って歩いて行きましょう!」という先生の言葉とともに散策がスタートです。


 明治神宮の森には、童謡「春の小川」のモデルとなった川の源流や代々木の地名の由来となった木があります。現在は由来となった木そのものはありませんが、昔の代々木の木は登ると江戸城の中が見えてしまうほどの大木だったそうです。そのため登ることが禁止されていたという話を聞きました。


 時折立ち止まっては、楠の落ち葉を拾って嗅いでみたり、何の木をつかった鳥居なのかを木の割れ目の匂いから木の種類を当てるクイズにも挑戦し、五感で散策を楽しみました。
散策の途中で「掃き屋さん」と呼ばれる職人さんのお仕事を拝見しました。
身丈以上もの柄の長い竹箒で、参道に落ちた落ち葉を回収する専門職の方です。
明治神宮では「一木一草持ち出してはならぬ」と言われており、落ち葉は全て森に返すというルールがあります。循環型の森作りの一部を覗くことのできた瞬間でした。


その後、本殿でどんぐり拾いの成功を祈願し、いよいよどんぐり拾いが開始されました。
まずはじめに「どんぐりを拾う時には、下だけでなくて上も見て探してください」という説明を受けました。
「上を見る」とは、どんぐりの木の種類を見分ける為に葉の色や種類を見分けるために必要な作業の一つです。
どんぐりの形・木の特徴を教えてもらいながら、来春芽を出してくれそうなツヤのある元気などんぐりを探しました。
こんなに本気でどんぐり拾いをしたのは、すごく久しぶりだった気がします。 

途中で、響さんが取り組んでいる田んぼにも立ち寄りました。
落ち葉を堆肥にし、森の地下水を引いて作っている田んぼだそうです。
ですが、地下水はその周りの環境によって左右されやすく、地下の道路開発などの影響が近年現れているとのことを知りました。


 明治神宮は、95年前に荒れた土地に作られた人口の森です。
森作りの計画が150年先まで記された計画書が今でも残されており、計画的な森作りが行われてきました。
しかし、都心部で森を維持していくことは決して容易ではないことを考えされられました。
「数千年続く森の時間からしたら、今日は非常に僅かな時間。けれども、森の命を繋いでいくには大切な瞬間」であるというお話が非常に印象に残りました。 

今年はアニバーサリーイヤーということでこれまで参加者の先輩方が多く集まってくださり、苗木との思い出やエピソード・どんぐりの苗木を育てるためのアドバイスを話してくださいました。
「持って帰ったどんぐりは枯れてしまったけど、一緒に芽を出していた紅葉は元気に育っている。」
「自然界に戻っても、ちゃんと育つように甘やかさないで育てている。」
「苗ポットには1つ以上のどんぐりが入っているので、枯れてもあきらめないとまた芽が出てくる」
と、あまり過保護にはならずに、育てるのがポイントなのかもしれません。


 3歳で初回から参加している大先輩は、今年中学生となり、クラスのみんなにどんぐりや自然環境について知ってもらいたいという思いで「どんぐり新聞」をつくって配布しているという話を発表してくれました。

袋いっぱいのどんぐりを拾い、どんぐり育成場所へ向かいました。
拾ったどんぐりを選別し、最後にこれから1年間一緒に過ごす苗をみなさん真剣な芽で見極めて、里親として持ち帰りました。


 また来年、もしくは数年後に大きく成長した苗が森に集まる日が待ち遠しいです。私も里親として預かった苗が立派に育つように、これから毎日観察とお世話をしてこうと思います。


(レポート:薄井唯、写真:野原邦彦)