シブヤ大学

授業レポート

2015/11/20 UP

交通費タダ! 人に会いに行く旅をしよう。
@茨城県 県北地域


「人に会いに行く旅」・・聞いただけでなんだか自然と心が”ほんわか”するような、そんな温かみを感じる旅。
今回の旅でお会いした地域に暮らす方々はいわゆるIターンやJターンをした移住者。
だけれど、地方か都市か。そんな切り分けではなく、シンプルに『ココにいると自分が幸せになれる、だから住まう。』
今回の旅は、そんな一人ひとりの価値観に触れることができる素敵な時間でした。


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1日目:2015年11月7日(土)
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8:00 渋谷発
今回の参加者は20代の大学生から第2の人生を手前にした人生経験豊富な方まで、全25名で一路ワイワイと賑やかに茨城まで向かいました。

「『いばらぎ』ではなく『いばらき』です!」
「これから行くのは『北茨城』ではなく『県北(けんぽく)地域ですよ〜!』」
「茨城に行ったことはありますか!?」「(シーーン…)」
皆さん、なかなか茨城への理解度は低い様子。。
今回の現地コーディネーター若松さんの表情が曇るなか、
果たして、この旅を通してどれほど茨城への魅力度がアップするのでしょうか??

10:00 【コクリエ「グッドデザイン賞な部室シェアハウス」:三ツ堀裕太さん】
バスで揺られること約2時間、
最初の目的地、茨城県日立市にある株式会社ユニキャストが運営する地域貢献型シェアハウス「コクリエ」に到着。
ここでは、ユニキャストの三ツ堀さん、飯田さん、地域貢献サークルHEMHEMのメンバーの皆さん、そしてpepperくんが迎え入れてくれました。

建物は開放的で木の温かみを感じる非常に素敵な空間。
パーティーのお知らせや連絡事項を伝える共用の掲示板もあります。
共有空間で多くの時間を過ごして欲しいと、あえて個室は狭目に作ったんだとか。
他にも掃除が楽なようにあえて浴槽を無くすなど様々な工夫がなされています。
居住用の個室は全16部屋あって、現在は近くの茨城大学や茨城キリスト教大学の学生さんが住んでいるそう。
株式会社ユニキャスト三ツ堀裕太さん:
「子どもの頃ドラクエ3が大好きで、そこから人に感動を与えられるSEになりたいという夢を持ちました。大学時代から実務経験を積みたいと思っていたけれど、そんなバイト先はどこにもなかった、だったら起業してしまえ!と。笑 ただ、一緒に起業したメンバーが就職で東京に出て行ってしまい、その時からどうしたら地域に人が残るのか考えるようになりました。そのため、会社の中でも人材やチームワークのことは常に考えています。ホラクラシー型の組織を整えたり、互いにありがとうの気持ちを給与に反映するシステムを取り入れたり。また採用制度として学生時代に必ずインターン期間を設けるようにしています。そこでこちらも学生もお互い良いなと思えたら採用になる。こうすることでミスマッチを防ぐことができます。お見合い結婚ではなく恋愛結婚ってやつですね。今後の夢は5年後に100人規模の会社にすること。会社をメチャクチャにしてくれる人に来て欲しいです。その方が見ていて楽しいので!笑」

移動→ 昼食(日立おさかなセンターで海の幸)
お昼は地元の人で連日賑わう日立おさかなセンターにて、
久慈漁港にあがった新鮮な海鮮を、自分で好きなものだけとって作る「味勝手丼」を各自堪能!





14:00 【ストームフィールドガイド「関東で鮭が遡上!紅葉の那珂川ラフティング」:山本滋さん】

午後はこの旅の中でも1番人気のラフティング!
朝日山を水源とする那珂川はダムが無く本当の意味での自然の川。
そのため、鮭や鮎、ウナギなども多く、そこに集まる野鳥など生態系も非常に豊か。

川岸に着くと鮭の遡上で辺り一面、磯っぽい匂いが漂っていました。
ラフティングボートに乗り込み漕ぎ始めるとすぐに、鮭がジャンプする姿や高速で遡上する姿を何度も目の当たりに!

東の嵐山と例えられる絶景の紅葉スポットや自然の凜とした静かさを味わいながらゆっくりと時間が流れていきました。
那珂川は春は新緑、夏はホタルや花火(ナイトカヌーもやっているそう!)など、どの季節に入っても四季折々の風景が楽しめる場所でこの場所に移り住んだ山本滋さんもこの自然豊かな川に魅了された一人。
「子どもの頃は鍵っ子世代、受験世代を経験し都内の私立校に通っていたが、何か満たされないと感じていて。大学時代に山登りや自転車での旅、カヌーを通して自然の中での開放感を味わったんですよね。会社で10年間勤めたんですが、上司に好きなことをやれよと背中を押されて。会社を辞め、千葉や栃木などのカヌーショップで経験を積んで、最終的に那珂川でやっていくことを決めました。ここにしたのは初めて本当の自然の川だと思えたから。カヌーを通じで鮎や鮭など自然の豊かさを伝えたいと思いました。田舎でやっていくには人間付き合いが大切で、自分のことばかり話していても受け入れてもらえません。まず2時間は相手の話を聞くようすることで、今でもそうしてます。笑 今後の野望としては、地元食材を使ったレストランを開くことです。スタッフに元飲食店で働いていたIターンの女の子がいるのでその子と一緒に取り組んでいます。移住は大変というけれど、以外と住んでしまえば物事はすんなり進みますよ。」 

またスタッフには20歳の大学生も。
「地元は茨城だけど、大学は静岡なので週末や長期休みだけこちらに来てお手伝いをしています。週末は金曜の深夜12時に自動車で静岡を出て朝5時にこちらに着きます。車の運転とカヌーが好きなので、ちょうどいいんですよ!那珂川は本当に自然が魅力です!夏にはウナギ漁もしました。」

18:00 宿「たかはら自然塾」着
      夕食(地物の鮭で鮭いくら丼・ちゃんちゃん焼き、豚汁)
夕食はラフティングでお世話になったストームフィールドガイドのスタッフの皆さんが地元食材を使ったちゃんちゃん焼き、いくら丼、豚汁を作ってくださいました!

また、大子町と日立市でそれぞれ地域おこし協力隊をしている村松さんと渡邉さんも地域食材を持って駆けつけてくださり、市場に出回ることは滅多にない品種のリンゴや1玉200円の超高級卵、アップルパイ、刺身こんにゃく、厚揚げなどなどを本当にたくさんの差し入れしてくださいました!


若松さん厳選の地酒とともに、地元の方や参加者同士で深夜まで宴が続き、一段と交流が深まった様子でした。
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2日目:2015年11月8日(日)
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7:30 朝食
朝ごはんは地元の食材を使った和朝食。
高級卵と高級納豆を目の前に皆さんの目もキラキラ☆
卵の殻が青いのは鶏にそば粉を食べさせているからだそう。卵からはそばの香りも漂います。
地元の牧場で作ったとっても濃くて美味しい飲むヨーグルトも頂き、朝から心もお腹も満たされたところでバスに乗り出発。

移動 (宿→里見地区)

9:00 【森林インストラクターの岡崎靖さんと秋の里山散策】

2日目は常陸太田市の北部、福島県との県境に位置する里美地区を堪能しました。

午前中は森林インストラクターの岡崎さんが里美地区をぐるっと歩いて紹介してくださいました。
お天気はあいにくの雨でしたが、雨ならではの里山の風景も味わい深いものでした。

「私は日立市出身で、1997年から里美に移住しました。祖父母が伊達市で桃農家をしていたので、小さい頃から従姉妹たちと手伝いをしていて、すごく楽しかったし、川や山や道などの風景が大好きでした。小学生ながら2階から見える風景が屋根ばっかりの地元とギャップを感じていたのを覚えています。最初は会社と里美とを行ったり来たりの生活でした。仕事と家との往復では地元の人と繋がりきれないと感じつつも田んぼも畑も持っておらず何ができるんだろうと考えた時に自分は森が好き!という想いから里美の良さを伝える仕事がしたいと、13年前に森林インストラクターの資格を取得しました。「山と人」というよりは「里美と人」がどう繋がるかを常に考えて様々な取り組みをしています。経済活動や教育活動を通して昔ながらの人がどう生きてきたか次世代に伝えていきたくて、皆さんがこの後に会いに行く長島さんと一緒に会社を設立しました。何もないことの方が多けど、里美の魅力を伝えて外からお金を落としてもらって、そのお金が外に出ないように中で使うことも大切ですね。」


12:00 昼食(里美新そば祭)
当日は里美かかし祭りが開催されており、力作ぞろいのかかしを楽しむこともできました。毎年、このかかし祭りを楽しみに県外からの出展もあるそう。
今年はラグビー五郎丸かかしと茨城のゆるキャラねば〜る君が大人気でした!



またお昼は名物の常陸秋そばを皆さん堪能されていました。
地元のブランド牛、里美牛も絶品らしいので今度来た時はぜひ食べたいです!

13:15 【大中神社:常陸太田アーティスト・イン・レジデンスのなるさんとヒタチオオタ芸術会議】
午後は約1200年前に創建されたとされる杉の木々が立派な大中神社へ。
すらっとした大杉に囲まれた境内は静寂で凛とした空気が漂います。

ここでは常陸太田アーティスト・イン・レジデンスが主催するヒタチオオタ芸術会議に参加し、地元の小学生総勢50人が協力して夏休みから準備し作り上げたというおっきな紙芝居を鑑賞しました。 
紙芝居は大きさからストーリー、絵の構成まで全て子供たちが考えたそうで、とっても素敵な作品に仕上がっていました。また、おっきな紙芝居舞台は地元の大工さんが作ってくれたそうで、地元の様々な人が協力して作り上げられたぬくもり溢れる芸術祭になっていました。

また、地元和太鼓グループ和奏(わかな)の皆さんによる演奏もあり、子供たちや参加者の皆さんも竹筒も叩いて一緒に演奏を楽しみました♫


14:40 【古民家荒蒔邸「Iターン里山女子の挑戦」:長島由佳さん】

      軽食(One-day cafe 里美の休日)
本旅、最後に向かった場所は古民家荒蒔邸。
毎月第2日曜日は「One-day cafe里美の日」として地元の各お店でおもてなしを用意しているそうですが、「里美の休日」もこの日に合わせ月に1度だけお店を開くそう。
地元の食材を使ったランチや里美の水で淹れる珈琲を出しているそうです。

長島さんは2011年から地域おこし協力隊として里美に移住し、3年間の任期を終了した後も「里美にこのまま暮らしていたい!里美で働きたい!」との想いで現在まで様々な活動を地元の方と一緒に取り組んでいます。

「小さい頃から平和に関心があり、清泉女子大学地球市民学科に進みました。大学時代はフィールドワークや教職、バイト、遊びなど様々な経験をし、平和には外なる平和(衣食住が最低限満たされている状態)と内なる平和(自分の心が満たされている状態)があることに気づきました。私は海外で外なる平和を実現したいと思ったのでまずは社会を知ろうと思い旅行会社に就職しました。働き始めると内勤だったためやっていることが、実感できず辛く感じていました。都会的な楽しさを満喫しつつも、やりたいこととかけ離れたことをしていたので、自分の幸福度も下がっていました。その後25歳の時に里美に来ましたが、専門性が無かったので地域のニーズを集めて寄り添う活動をしていました。その時は地域おこしというよりはいかに里美の美しい状態を次世代に残せるかということがテーマでした。協力隊の時は色々とうまく動けない部分もありましたが、任期が終わって一般市民として里美に住み始めてからは自分が主体的に取り組めるようになって加速度的に動かすにはどうしたらいいかと考えた時に起業という選択肢を選ぼうと思いました。私は地元の人ではないから土の人にはなれないけど、風の人にもなりたくない。であれば水のようにじわじわとその土地に染み込むような存在になりたいと思っています。今は東京の会社で働いていた時とは違って、やっていることが手に取るようわかるのですごく楽しいし、”暮らし”と生業としての”仕事”と地域を維持していくための”シゴト”が重なっていて、重なる部分が増えれば増えるほど自分にとっては幸せだと気づけました。また人口の小さな町に来たことによって逆に自分の世界観や奥行きが広がっているように感じます。今の私の幸せに過ごすための価値観は2つあって1つ目は『魂が喜ぶ仕事をすること』、2つ目は『手の中に収まる暮らしをすること』です。この2つが叶えられる場所が里美なので、ここで暮らすことが自分に合ってるなと感じます。これからも、もっともっと地域の人が誇りを持てるような手伝いをしていきたいと思っています。」

16:00 振り返り
最後にそのまま、荒蒔邸の場所をお借りし参加者同士で感想をシェアしました。

その中で、
「様々な人の価値観に触れることで自分の価値観を再確認したり、人と接する上で新たな判断材料になりました。」
「人にも自然にもたくさん癒されました!参加して本当に良かったです。」
「また会いに来たい人と思える人と出会えました!」
など参加者から感想がでました。
「茨城の魅力を存分に知りました。魅力がない県最下位なんてウソ!もっとアピール頑張ってください!!」という手厳しい意見も。。笑

17:30 里美発
21:30 渋谷着

今回の旅は私にとっても新たな発見が多かった貴重な機会でしたが、冒頭でも書いたように「自分の幸せを追い求めた結果、ここに住んでいる人たちだからこそ、地域にも深く長く根付くことができるし、地域にとっても幸せが広がる」そんな生き方に出会うことができました。
自分の幸せを考えていくことが結果的に全体の幸せにつながる。であるならば、まずは自分の価値観や軸を問い直すことが幸せへの始めの一歩なんだろうな。
そんなシンプルな気づきがある素敵な素敵な「人に会いに行く旅」でした。

(レポート:加藤白峰)

※ 本授業は、NPO法人ETIC.の自主事業として、シブヤ大学とのコラボレーションで実施しました。