シブヤ大学

授業レポート

2015/10/28 UP

全部自分でやってみました!
~Dictionary 27年目の挑戦~

◼︎西武渋谷店×シブヤ大学 「オトナゲNight」 始動


〜いつの時代も人を、街をワクワクさせてきたのは、 子どものような好奇心とほとばしる情熱を持ったおとなだった。

西武渋谷店5F、A館B館のラグジュアリーな“オトナ空間”をつなぐスペースで開催された、第一回「オトナゲNight」。お仕事帰りの(と思われる)生徒の皆さんが次々に席を埋め、本日の先生、桑原茂一さんの登場で拍手が。サングラスにダークスーツ、黒のハットがおしゃれです。(サングラスのワケは後ほど)

「マイク? いらないよね? みんなもっと近寄ってきたらいいんじゃない、一緒に話そうよ。」

桑原さんの語りかけに笑顔がこぼれ、会場にうっすらと張り詰めていた緊張が一気にほどけます。

◼︎『dictionary』のこと、ラジオのこと。そして“反戦”のこと


 まずは、“教材”となった’88年創刊のフリーペーパー『dictionary』のバックナンバーを実際に手に取りながらながら、その変遷や制作背景のお話から(“教材”はすべてお土産に!)。 時代ごとに、スタイルやサイズ、質感などが様々に変化しながら、その一つひとつが完成度の高いアート作品の『dictionary』。多くのアーティーストやミュージシャンが参加し、対談や寄稿文、アート表現を通じて、ベースとなる“反戦、平和、環境”へのメッセージが発信されています。 


 
そして今、戦争への危機感を非常に強く感じているという桑原さん。 みんなが硬くなっているいやーな空気感があって、選曲を担当しているラジオ番組(Inter FM「桑原茂一のPirate Radio」金曜24:00 - 25:00)でも、こういう時こそふざけたいな、と心がけているとか。

「例えば、デモが熱く盛り上がっている時、参加した人から『行った?』と聞かれると『行ってない』って言うことが何だか申し訳なくなる感じ、ないですか?そういうのを“空気”って言うんだと思うんですよ。 行くこともいいし、行かない方法もあるわけだし。みんなの心根に何があるかの方が大事なわけですから。」

 メディアを通じて発信される桑原さんの“反戦”表現は、受け取り手へのリスペクトを前提に、個人の深い内省を促すような力強さを感じます。 

◼︎部︎ひとりでやってみました 〜27年目からの挑戦




 『dictionary』163号より、(いろいろあって)たったひとりでできることをやりなおそう、と、桑原さんが制作の全てを一人で手がけることに。DTPの世界では有名なソフト「Photoshop」「Illustrator」を一から学ぶところから、ソーシャルファンディングの可能性、メディアミックス(ラジオ×Twitter。曲にインスパイアされたリアルタイムのツイートでnetクラブ化!)、注目している若い人たち…新たに動き出しているたくさんの「これから」が次々に熱く語られて

「これまで、自分の本当に好きなことをやっていると思っていたにもかかわらず、本当に好きなことをやってこなかったんじゃないか?という思いに駆られるようになりましたね。 なんでこれを先にやらなかったかな、と。 僕の場合は、27年かかったんですね。」

 そして昨夜、担当しているラジオ番組の締め切りで徹夜で選曲に夢中になって、今朝、気付いたら目が真っ赤になっていて…結膜下出血に。(それで、サングラスを)

「…もう、とりあえず一旦捨てて、聴きたい曲を聴こう、と。で、聴いてみたらなんか踊りたくなって、踊ったんですね、ひとりで。鏡の前で『大丈夫かなー』って(笑) そしたら 『いいんじゃねーの、もうオレはこれで』 って、すっごく楽になって。」

 若い頃から踊るのが好きで、ダンスステップを覚えたくて500円を握りしめ通った西麻布のクラブが音楽との出会いという桑原さんが、気がつくと、常に“オーガナイズする側”にいて、自分で踊ること(本来の自分らしくいること)を楽しめなくなっていたのだと。
 27年目の挑戦は、桑原さんに“自分が踊りたいように踊る”快感を想いださせてくれたようです。



 ベトナム戦争時の星条旗通りのクラブの賑わい、小林克也さん、伊武雅刀さんとの出会い、ラジオ現場の規制とのタタカイ・・など「あの頃のこと」も随所に織り込まれ、生徒のみなさんも前のめりになっていましたが、リアルタイムで『スネークマンショー』の登場に衝撃を受けていた私にとっても、本当に貴重なエピソードの数々に、改めて桑原さんの作品を辿ってみようと思いました。
 
 東京のカルチャーを牽引し時代を築いて来られた桑原さんが、今も、新しいヒト・モノにどんどん出会って、今こそ自由に“本当にやりたいこと”に向かっていらっしゃる姿はエネルギーに溢れていて、“子どものような好奇心とほとばしる情熱を持ったおとな”そのものでした。



 みなさんも是非、ダイレクトに桑原茂一さんの発信するメッセージに触れてみてください。

<桑原茂一さん情報>
FREE PAPER dictionary
Inter FM 「桑原茂一のPirate Radio」  
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(レポート:門 育子、写真:高木夕子)