シブヤ大学

授業レポート

2015/10/19 UP

中津箒(ほうき)をつくろう!
~伝統の技を学ぶ〜

箒つくりの材料の周りに椅子を並べて、講師の吉田慎司さん、同じく作り手の横畠梨絵さんと受講生12名が車座になり授業が開始されました。


どんな食べ物が好きですか? をお題に自己紹介から開始です。
肩の力が抜けたところで、中津箒の由来と現状をお聞きしました。




◇中津箒の概略


・明治維新の頃、箒草の栽培と箒の製造技術を学び故郷に持ち帰り、箒産業が中津村一帯に広まった。
・大正期から昭和20年までの間に箒産業はますます発展し、ほとんどの農家が夏場、小麦を収穫した後の畑に箒草を栽培し箒を作った。
・戦後に入ると、安い箒草を求めて台湾から輸入。やがて加工された箒が安価に輸入されたことから、日本の箒産業は大きな打撃を受けた。
・昭和30年代になると電気掃除機が普及し、また生活様式も変化し、箒の需要は一気に衰退した。
・機械生産の安い箒も出てきたことから、現在手作り箒は自家用が中心となっている。


 


◇現在の中津箒


箒作りを復活させるため原料であるホウキモロコシの無農薬栽培を進め、様々なイベントへの出展やミニ箒作り講習などにより文化の復興を試みている。
2008年、箒の文化に興味をもつ若手が加わり、さらにかつての職人山田次郎さんも加わった。




箒つくりの開始です。


◇箒つくりの材料


・ホウキモロコシ
穂を箒やブラシとして利用するために栽培されるイネ科の一年草。草丈2~4mで,夏に茎の先に穂をつける。
今回は小型の箒を作るため、15センチ位に揃えた穂先と柄の部分をカバーするための茎が用意されました。 


・糸
天然染料を用いたタコ糸(綿糸)を使用。手染めで独特の風合いがあります。
今回は、藍染、べんがら染(赤)と白が用意されました。


今回は、一個目の穂先と柄の部分を予め糸で巻いたものを準備していただきました。


 


◇実技指導


・実際は、床に垂直に据え付けられた太い棒に糸を巻き、その前にじかに座り作業をされるそうですが、今回は椅子に座りH形に作られた糸巻きを使います。
・糸巻きを足で押さえ、糸をピンと張って一個目の穂先に巻き付け、二個目の穂先を横に追加します。
・柄の部分をカバーする茎を一本ずつ加え、糸を巻きます。このとき一本ずつ交互に茎の上下に糸を通し編んでいきます。


 


◇作成作業


・参加者がおのおの好きな色の糸を選び、箒つくりを開始します。
・自分でつくり始めると、最初のうちは要領が分からず講師の手ほどきを受けました。
・少しやっていくとコツらしきものが掴めたのか、手の動きた早くなっていきます。
・一番のコツは、糸にテンションをうまくかけて編みこんでいくことのようです。
・途中の出来栄えを見て、最初からやり直す人もチラホラ出てきました。
・穂先が五つ揃えば出来上がりです。あとは柄を好みの長さにします。
・一通り出来上がったところで、最後の仕上げとして、ループをつけてもらい、引っ掛けて保管できるようにしました。



時間内に全員が完成することができました。


余裕がある方は、箒の先の広がりを防ぐコアミ(飾りにもなる)という、箒の表部分に糸を編み込んでいます。

◇講師のお話し 


・穂先がとても柔らかく立てかけると重みで曲がりクセがつくため、保管の際は必ず壁にかけてほしい。
・使っていくうちに、穂先が痛んできたら、穂先を数ミリずつ切ってください。 
根元に行くほどに穂先は硬くなるので、最初は座敷、次に板の間、土間、庭と順番に降ろして行くのが昔ながらの使い方です。
・今日は、いつもやっているワークショップより難しい内容でしたので、完成できるか不安がありましたが、全員完成できてホットしています。


 


最後に、皆さんで記念撮影。


同じ作業。でも、出来栄えは人それぞれ。糸の選び方、糸の巻き方で同じものは一つもありません。
モノづくりでは個性が浮き彫りになることを皆さん実感したようです。
何よりも、完成できた喜びが笑みとなってこぼれています。

お掃除ロボットもいいけれど、昔ながらのナチュラルな箒もいい、あなたはどちらを選びますか。
両方あるのが、いいですね。
箒も暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。


 
(レポート:竹田憲一、写真:小野寺理香)