シブヤ大学

授業レポート

2015/5/22 UP

読書の愉しみ
〜乱読の先に見える景色とは〜

【私の「まなび」】


① 本をたくさん読むことでわかること・わからないことの境目が明確になっていくということ
② 本を読むにも順番があり、その順番がとても大切だということ
③ いろいろな本の選び方がある。人からの薦め、本屋で出逢う以外に、キーワードで検索するという探し方がある。まったく知らない本と出逢う可能があり面白いが、その分良本と出逢う確率は低い。


【先生の「ことば」】


①「乱読に走るきっかけが、コンプレックスがきっかけだった。読書=わからないことを埋める」
②「本棚の中でその人がわかる」
③「知識・時間・能力がなくて本を楽しめないのはもったいない」


【授業レポート】


「いやぁ、本当に恥ずかしいなぁ~」何度も頭を掻きながらお話を始めたのは、今回のまちの先生、山本尚毅さん。

今回の授業は『読書の愉しみ ~乱読の先に見える景色とは~』。
先生が今まで読まれてきた本を通して見えた世界、また新しい読書会のカタチについてみんなで学ぶため、総勢30名の本好きが集まりました。

授業開始までの数分間もみなさん持参されている本を読みながら待機。さすが、読書好きです(笑)

今回のまちの先生、山本尚毅さんは、HONZの開設当初からレビュアーを務めており、年間200冊~400冊近く本を読まれるそうです(すごい!!)

そもそも山本さんがたくさん本を読まれるようになったきっかけは、お母様が読書家で本であればなんでも買ってくれるという環境であったということ。

そこから乱読に走ることになったのは、まったくの畑違いの業界に就職されたため、たくさんの「わからない!!」に出逢ったから。わからないというコンプレックスから今まで以上に読書をされるようになり、わからないことを埋めていこうと、たくさんの本を読み漁ったそうです。その当時から読んだ本の記録をつけられていたため、ご自身が当時読んでいた本の写真を紹介されたときには本当に恥ずかしそうで、例えばすぐに使える営業のノウハウ本など実用書などでした。

そこからさまざまな出会いがあって人の本棚に触れる機会があり、山本さんはあることに気がつきました。

『本棚を見ればその人がわかる』

授業の冒頭に恥ずかしそうにお話をされたのは、自分の本棚の中を見せること=自分をさらけ出すことだったからです。

知りたくて読み始めた本で読めば読むほどわからないことに出会い、時には知恵熱を出しながら、山本さんは人生の起点になる本と出逢ったそうです。そんなご自身の経験から、『面白い本をもっと紹介したい!インターネットという平面な世界で自分なりの切り口を大切にしたい!!』と現在も本を紹介されています。




▼山本さんの紹介されていた読書のススメで興味深いものをいくつかご紹介:


本を読むにも順序がある…知識、時間、能力がなくて本を楽しめないのはもったいない!!まずは優しく書いてある本から始めて徐々に深く潜っていく。
※最初はすぐに使える実用書を読み漁っていた山本さんが深く潜りすぎて、世間との距離が生まれたとおっしゃっていたときはどれだけ深く潜ったのだろう。。と驚きました。(実際、最近読まれている本の写真は、マニアックなものばかりでした。)

偶然性を大切にするなら『Amazonのキーワード検索』…読書傾向が偏りがちな人にオススメ。ただし、勝率(面白い本に出会う確率)はかなり低い。普通に選んでも3勝7敗くらいの勝率が、1勝できるのかというところまで下がる!?

自費出版の本はトンデモ本(なぜ読んでしまったのか!?という気持ちにさせる本)の可能性高い!!…まったく知らないおじさんが思いの丈を書いている可能性大。Amazon検索で出会う可能性あり。ただ、たまに面白い本もあり。




『Amazonのキーワード検索』で一歩間違うと、トンデモ本にも出逢うという危険と隣合わせの本選び。さすがというか乱読している方は違うなぁと素直に感心してしまいました。

山本さんのお話の他にも読書好きのみなさんがオススメしたい本を持ち寄り、自己紹介を兼ねたマンダラート(自分を表すキーワードを8つ書くシート)を使ったオススメ本の紹介タイムも大いに盛り上がりました。

万人に向けてのオススメ本を紹介するのではなく、マンダラートを見て「あなたに届けたい!!」と紹介するので、紹介された方は『新しい本』の他に『自分はこんな風に人から見られているのか!!』という2つの発見があったのではないかと思います。

『本棚を見ればその人がわかる』という言葉通り、山本さんの飾らない雰囲気やお話はたくさんの読書好きの方をさらなる読書の世界に導き、知らなかった新しい世界と出逢うきっかけになったはず。

山本さんの乱読の先に見える景色は 『わかることとわからないことの境目がわかり、一生かけてもすべてをわかることはできない、真っ暗な景色(笑)』とのこと。
わからないから読みたい、知りたいという山本さんのエネルギーはこの先もずっとなくならないんだなぁと思いました。

無難な『帯買い派』の私も、たくさんの本との出会いを通して素敵な本棚を作っていきたいと思います。


(レポート:伊藤 扶美子)