シブヤ大学

授業レポート

2015/5/16 UP

ハートをつなごう授業 〜第三弾!〜

運動や合唱をしたり、みんなで一緒にカレーを食べたり…
盛りだくさんだった今回の「ハートをつなごう授業」。
様々な活動を通してセクシュアリティについて考える一日となりました。


1.  まずは今回の授業コーディネーターでもある杉山文野さんによるオリエンテーション。

みんなで立ち上がり「気をつけ!おはようございまーす」という杉山さんの声から始まりました。
なんだか本当に学校で授業を受けているみたいでわくわく。
ここではトランスジェンダーである杉山さんの、子ども時代から現在に至るまでのお話をききました。
バックパッカー生活で世界各国(南極にも行ったとのこと!)を回った体験を通して、
日本でも海外でも、どこへ行っても性別を問われることを痛感したそうです。

そして、性には3つの要素があると考えました。

それは、カラダの性、ココロの性、スキになる性。
そして性別にも女性、男性、そのどちらにもあてはまらない性の3つがあります。


例えば、カラダの性が女性でココロの性も女性、スキになる性は男性というのが「普通」と考えられているかもしれないけれど、カラダは女性、ココロは男性、スキになるのは女性という場合もあります。
この様に性の3つの要素を3つの性の場合で組み合わせていくと最低でも27パターンに分けて考えられるとのこと。なるほど、こんなに多様なのですね。私は今まで目に見えるカラダの性でしか性別を判断してこなかったことを初めて自覚しました。

このように、セクシュアリティは他人の目には見えません。
その目に見えないものを可視化したい、という思いから東京レインボープライドがつくられました。
レインボープライドは、LGBT等性的少数者(以下、LGBT)の当事者やその支援者がつながる場を提供するため、毎年ゴールデンウィークにレインボーウィークと称してイベントやパレードを実施しています。

また、LGBTをオープンにしている人は少なく、そういった人たちが社会でどんな活躍をしているのかもあまり知られていないため、LGBTの子どもたちは大人になった時のロールモデルを見つけられずにいます。そんな現状を変えるために、LGBTの人たちがどんな活躍をしているのかを発信する場、NPO法人「ハートをつなごう学校」がつくられました。(杉山さんは東京レインボープライド、ハートをつなごう学校の代表をなさっています)。

今年で3回目を迎える、シブヤ大学とハートをつなごう学校との共催授業も、レインボーウィークの一環だったのですね。


2.  続いては、真道ゴーさんによる「みんなで体育!」の授業です。

プロボクサーでありながら、子どもたちへのスポーツ指導も行っている真道さんと、みんなで体を動かしました。
授業冒頭、真道さんから「運動神経がいい人っていうのは、五感から得た情報を処理するのが速い人」とのお話がありました。
この処理速度を上げるためのトレーニング、「コーディネーショントレーニング」を普段子どもたちに教えている真道さん。今日の生徒さんは最近運動していないな、という大人が多いみたいですが…みんなでやってみました!
じゃんけんと足し算を組み合わせたゲームや、9人組になってジェスチャーゲーム(うまく伝達できなかったチームは腹筋の罰ゲーム付き!この真道式腹筋がとてもきつくて効いている感じがします…)等々を行いました。

休憩をはさんだ後には、真道さんに、性同一性障がいを受け入れるまでの葛藤や、それを乗り越え、WBC世界チャンピオンになるまでのお話をしていただきました。


3.  みんなでお昼ご飯を食べた後の最後の授業は音楽です♪

山田邦子さんが、普段はがん撲滅を目指して歌う「スター混声合唱団」の方々を引き連れて、合唱の授業をしてくださいました。

3つのグループに分かれて「春が来た」「夏は来ぬ」「雪」という季節の歌を輪唱したり、山田さんが病気になった時のことやそれを乗り越えるまでのお話を聞いていると、あっという間に時間が過ぎていきました。
山田さんのお話の内容にはつらいこと、大変なことも沢山含まれているのに、それ以上に笑いで溢れていました。みんなで歌ったり、笑ったりしている時間には、つらいことも頭からなくなります。


最後に、山田さんが作詞をした「あなたが大切だから」という曲をみんなで歌い、この日の授業は終わりました。


4.  「がんばるのと無理するのはちがう」

この日、とても印象的だったのは、真道ゴーさんがお姉さんに言われたというこの言葉でした。


オリンピックに行くことを夢にバスケットボールに打ち込んでいた大学時代。
でも、現実はそんな真道さんの思いに反します。

「あんたはみんなとは違う」
「女か男かわからんやつはいらん」

そんな言葉をチームメイトから言われ深く傷つきながらも、途中で投げ出すまいとチームでがんばり続けていた時、お姉さんに言われたそうです。

「あんたの居場所はそこじゃないって言われてるんちゃうかな」

当時、自分が自分ではいられなくなる限界に達していた真道さんは、その言葉に後押しされ大学を休学することにします。休学後の出会いの中で、自分の人生が上手くいかないのを全て性同一性障がいのせいにしていた自分に気がつき、「自分で自分を大切にできないやつは他人からも大切にされない」と思うように変わっていきました。
そうして自分自身を受け入れようと決意し、家族や友達に、それまで言えなかった本音を打ち明けました。
その時、お母さんに

「あんたが男でも女でも、あんたが息をして生きていることが幸せ」
「これからずっと先のことを考えるとつらいことは沢山ある。
   でも、今日、明日を笑顔で過ごすためには何をしたらいいかを一緒に考えよう。
   そうやって一日一日がんばってたら必ず先は開ける。それだけは信じて」

と言われたそうです。

確かに、自分を受け入れて、自分が心から笑顔でいられる一日を過ごすために頑張ることと、周りに合わせるために自分を抑えるよう無理をすることは違いますね。このお姉さんとお母さんの言葉は、私にも深く響きました。
どんな人でも自分を受け入れて、本音を周りに伝えるのは怖いし、勇気がいります。でも、自分の本音を他人に伝えることで初めて自分に共感してくれる人ができるのだ、と杉山さん、真道さん、山田さんのお話を聞いていて思いました。
真道さんのお母さんのように、山田さんの歌の歌詞のように、
「あなたが大切だから」どんなことでも受け止めてくれる存在がいることに初めて気が付くのだと思います。

とはいえ、本音を言ったときに味方になってくれる人ばかりではありません。でも、みんなが敵になるわけでもありません。私は(恥ずかしながら)この日までLGBTという言葉やセクシュアリティが多様であることをよく知りませんでした。私のように、強い偏見はないけれど自分にとって身近な問題ではないからよく知らない、というだけの人も一定数いるような気がします。
やっぱり、知らせるって必要なのですね。


この日一日、みんな一緒に授業を受けて「お互いを認められる仲間がいるんだなぁ」と感じました。

本音を言うには勇気がいるけれど、どこかに認め合える仲間がいるはず。
自分を大切にして日々を過ごしていれば、きっとそういう仲間が見つかるのだと思います。

それはLGBTであってもなくても、大切なこと。


これからもレインボーウィークが、多くの人の仲間づくりのきっかけとなりますように!


(写真:箕田真衣/レポート:中野恵里香)