シブヤ大学

授業レポート

2007/6/13 UP

              

童謡『ふるさと』の歌詞を音読する男性、その足元には植物の植えられた箱。それを取り囲むように10人ほどの男女が箱の中身について意見を交わしている…。

これは、以前銅金博士が行ったシルバーカレッジという高齢者の学ぶ学校での1コマです。
男性の足元にある箱というのがガーデンシアター(箱庭園芸)で、その四角い箱の中には昔懐かしい日本の風景が凝縮されていました。丈の低い植物で作られた段々畑、お酒の枡を改良して作られた小さな家もあります。自作のガーデンシアターについて語る男性はとてもうれしそうに、目を輝かせて説明している姿が印象的でした。

ガーデンシアターを作るワークショップでは、ガーデンシアターが完成したら必ず、それを囲んで発表会を行うそうです。それぞれにこだわりや熱い思い入れがあって、ある人は自分自身を主人公にし、ある人は別のキャラクターを登場させて物語を作っています。まさに箱庭劇場といった様子です。そこには現実の世界と同じように時が流れ、しばらくすると中に配置された植物も成長し、苔も生えてきたりするそうです。

授業の行われた前の週、京都にある相国寺で「動植綵絵」の作者、伊藤若冲の展覧会が開催されました。その相国寺の近くに、若冲が晩年暮らした石峰寺があります。石峰寺には若冲が作らせたという石仏群があり、そこはまさに完全なガーデンシアターと言えるのだそうです。

銅金博士は言います。

「心の拠り所が消えている。心の中に世界を作る力が消えている。
植物の力を感じながら、箱庭の中で植物を育てる。私たちが思い描くことで、世界は変わるかもしれない…。」

若冲は、例えば蓮を描く際、蓮の習慣を越える部分を捉え、蓮の限界を想起しながら描いているようです。しかし、若冲のようにガーデンシアターの世界を作り上げるには、生き物についての深い知識が必要になってきます。
若冲が動植物たちの声を聞いたように、銅金博士はガーデンシアターについて語る全員の声をきちんと聞くのだそうです。「若冲の足元にも及ばない」と語る銅金博士ですが、そういった姿勢に、ガーデンシアターへの想いや若冲に対する尊敬の念を感じました。

今回も植物に関する新しい一面を教えてくださった銅金博士、次は一体どんなお話を聞かせてくれるのでしょうか?次回もお楽しみに!

(ボランティアスタッフ 安達光)