シブヤ大学

授業レポート

2014/10/20 UP

「養子」という選択

渋谷駅から明治通りを歩き、一歩裏道に入ると今回の教室、ケアコミュニティ・美竹の丘に行き着きます。秋晴れで昼間は暖かかったけど、授業が始まった夕方5時には少し肌寒くなっていました。

授業コーディネーターの遠藤さんから説明があり、その後はこの授業の企画者である西田陽光さんにバトンが渡りました。西田さんは一般社団法人次世代社会研究機構の代表理事を務め、特別養子縁組に関する様々な活動をされており、とてもパワフルでエネルギッシュな方です。

授業の前半は朝日新聞GLOBE編集部記者の後藤絵里さんによる、一般養子縁組と特別養子縁組との違いや、日本の現状・課題について養子縁組に関する概論の講義です。一般養子縁組は15歳以上が対象で、戸籍には「養子」と記載され、大人になってから家督を継ぐために行われることが多いそうです。一方で特別養子縁組は原則6歳未満の子どもが対象で半年以上の試験養育期間が必要だったり、戸籍でも実子と同じ扱いになり、実親との法的関係はなくなるなど、制度の内容がだいぶ違うことがわかりました。

後藤さんは、特別養子縁組は『子どものための養子縁組』で、家族づくりの選択肢の一つであり、子どもが永続性のある養育環境で育つことが重要だと話されました。一方で日本は「養子縁組小国」で、しかも特別養子縁組はまだ非常に少ないそうです。

ここまで聞いていて、頭の中がもやもやとしてきました・・。もし自分が特別養子縁組で今の親と家族になっていたら何か違うんだろうか・・。きょうだいとの関係は?それに自分が特別養子縁組で子どもを育てることもあり得るけど、出来るのか・・?などなど。家族って一体何で出来てるんでしょう。ふ〜む・・。

後藤さんは「子どもには愛されて育つ権利があり、多様な家族のあり方を認める社会になる必要がある」と提言されました。頭の中にはさらにもやもや増殖。自分が愛されてきたと実感するのに必要なことって何なんだろう・・。

もやもやしつつ後半へ。後藤さんの講義の後は、10歳の時にご自分が養子であると知ったIさんと、特別養子縁組でお子さんが生後1ヶ月の時から家族になったMさんのお話。Mさんのお子さん(現在は5歳)も授業に参加。元気な姿を見せていました。ちなみに今回はもう一人、授業コーディネーター松本さんのお子さんも参加し、お子さん同士の交流を育む裏企画もありましたが、交流はうまれたような、うまれてないような感じでした(笑)。

Iさんは養父さんからの愛情を感じて育ち、Mさんは愛情をかけ育てている真っ最中。私がお二人に共通すると思ったのは、人生の色んなアップダウンや、びっくりすることがあったとしても、今を真正面から受け止めて一所懸命に生きている姿勢。ぴしっと筋が通っているお二人でした。Iさん、Mさん、自分の経験を話すことは大変なことだと思うのですが、現状も含めて話してくださりありがとうございました。

その後は4〜5人のグループに別れ、ディスカッション。「家族ってなんだろう?」という西田さんの投げかけに、皆、ポツリポツリと話し始めました。私のグループでは「親と自分の関係はもう長い時間をかけて作られてきたもの、夫婦はこれから作っていく家族のかたち」「きょうだいとの関係は?」「同じきょうだいでも親との関係は違う」「家族は社会の一番小さい単位」「でも距離が近い分、生の感情が出ちゃうね」などの意見が出ました。もやもやしてたことがちょっと話せてよかった・・。

他のグループでは実際に特別養子縁組でお子さんがいる方の話や、特別養子縁組で子どもができた時にも会社の育児休暇はとれるのか?などの質問が出ていました。そして、西田さんからのコメントがあり、授業は終了。

振り返っても内容の濃い、充実の時間でした。お子さんの参加もあり、ちょっと落ち着かないところはあったけど、子育てはこの数百倍も大変なんだろうなと想像してみたり。それにお子さんいる授業は「多様な家族のあり方を認める」一つのきっかけになるかもと思いました。

養子縁組って、何だ?家族って、何だ?これはずっと考えていくことのなのかもしれません。そして時おり、家族や友人と「自分の家族のあり方」について話せたらいいなと思います。

レポート: あきやまけいこ
写真  : 松田高加子