シブヤ大学

授業レポート

2013/7/9 UP

BOYS CURRY ~流行りのフードワゴンでビジネスを知る!~

店舗を持たずにカレーやコーヒー、パンなど、様々な食品の販売を行うフードワゴン。今までは副業的なものとしての意味合いが強かったけれど、最近はかなり変化しているモデルだそうです。

今回は、『AERA』などで執筆しているノンフィクションライターの中原さんをファシリテーターに、フードマーケット『246 COMMON』デザインプロデューサーの黒崎さん、東京カリー番長の水野さんの三人のセッションから、フードワゴン人気の秘密を紐解く授業となりました。

■ 古くて新しいフードワゴンのあり方とは?
中原さん「日本にも夜鳴きそばがあったり、石焼き芋、チャルメラといったように、移動販売っていうのは新しい物ではない。けれども、最近イメージが変わって来ているのを感じます。安い賃金で立ち上げるカッコわるい物でなく、むしろ店舗を持つよりカッコいいスタイルとして増えているように感じるのですが、実際はどうなのでしょうか?」

黒崎さん「そうですね、もともとは海外にあったビジネスモデルで、キッチンカーやフードカートは、ポートランドなんかでは500件ぐらいある。日本での歴史も古いけど、その中で残っていくのは本当にオーガニックで若者達の思想があったり、デザインがかっこ良くて、農業と密接に結びついているものだと感じられる。」

■どんな人たちがやっているのか?
黒崎さん「例えばファーマーズマーケットは最初人が来なかったんだけど、今では一日1万人ぐらいの人が来るようになった。外資系の企業に勤めてたけど、花屋やコーヒー屋をはじめたりしていて、一日10万ぐらい売れる。そうすると土日だけで年間で1,000万の年収がある。前はみんな大企業のような大きな舟に乗りたがる傾向が強くあったが、今はかえってエリートという人達の方が新しいベンチャーキャピタル行くし、チャレンジしていく。安全なんてかっこ良くないんじゃないかという発想なのだと思う。」


■フードワゴンに向くもの/向かないものとは?
中原さん「飲食店をやろうっていう人のモチベーションが違う、変わってきているように感じます。カレーもですが、ラーメンも成功しているビジネスであり両方とも日本人が大好きだけれども、そこの違いみたいなものはあるのでしょうか?」

水野さん「ラーメン屋をやりたい人は、多くの人に来てもらいたいっていう人が多くて、ポルシェに乗ったりフェラーリに乗りたいっていうマインドというか、ビジネスとして成功したい想いが強いように感じる。カレーやコーヒーみたいなものは、自分のカレーが作れて、自分のつくった世界観を喜んでくれる人がいれば良いみたいな感覚なのだと思う。フードワゴンには、カレーの方が向いていると思うし大稼ぎしようとか目立とうっていうマインドがないような気がする。」

黒崎さん「もっと軽く生きて行きたいっていう時代の流れみたいなものを感じる。今まであったような成功ストーリーがいらない人が多いのでは。ポルシェもいらないし、借金も背負いたく無い。美味しい物を提供すること自体を楽しもうという感覚。ゆるくやってて楽しくやっていくといったスタンスというか。結果として大きくなろうが、そもそものスピリッツが違うように感じる。ただ美味しい物がいい、それですごい盛り上がるとかでもいいと思う。プライオリティがちがうけど、結果として儲けてもいい。」


■学生さんとカレー、新しい飲食の起業モデルとは?
水野さん「神保町、明治大学あたりがカレーをきっかけに最近盛り上がりをみせていますが、最近だいぶ変わってきているように思います。人気のあるところは、ばんばん商売するかっていったらそうでもなくて、気が向かなかったらやんないとか、インドに行きたくなっちゃったら行く、一ヶ月閉めてインド行っちゃった、それがキャラクターになってファンが着いたり。昔のカレー屋さんって、強迫観念があって、一日でも休んだら人が来なくなってしまうんじゃないかとか。夏休みやっちゃうとか、自由な感じで何が悪いのっていう感じ。があると思うんですが。」

黒崎さん「事業をはじめる際に、面白いっていう思いが先に在るのだと思う。カレーとか、コーヒーっていうのは自分の信念を持ちやすい。それが最高だって言われたら最高だと思うし、その為に必要なら海外にも行っちゃうというか。ナンバーワンよりオンリーワン、より、ナンバーワンかつオンリーワンでなければならないと思っている。オンリーワンにこだわるけれども、ナンバーワンにとらわれないのがいいと思う。」

■カレーレシピ&ビジネスコンテスト開催に際して、学生に望む事は?
黒崎さん「カレーはやっぱりカルチャーっていうものを感じられるし、ビジネスとしての取っ掛かりがいい。ただのレシピコンテストでなく、学生さんがやっているっていうことだから、どういうお客さんに食べてもらいたいとか、器とか、デザインとか、トータルで考えていってほしい。軽い感じをやっていく、こだわるけど、とらわれないといったイメージ。」

水野さん「一言で言うと、信念が見えるカレー屋さん。レシピも一応見ますけど、アドバイスできることもあるし、こういうカレーが出したいんです、っていうのがみえると、それならそれに重ねてアドバイスできる。それがなかったら、水野の店みたいになってしまう。飲食をやる上で、レシピはコピペできるけど、コピペできない想いみたいなものがあってほしい。飲食業なので、いくつぐらい売れるとまわっていくのかっていうところもある。素材を良くすれば、それは美味しくなるのはあたりまえだけど、それは経営なので。」


■質疑応答
Q.飲食をはじめる方には、自分で貯めてはじめる人が多いのか、銀行の借り入れで始める人が多いのか?

黒崎さん「両方。自分のポケットから予算がないならないなりにできる。お金があるならあるなりにできる。一番大切なのはやる気。」

水野さん「店舗を持ってカレー屋さんをやらないんですか?ってよく聞かれるんですが、これからもやるつもりはない。ぐるぐる出張してカレーやってるんですが、いままで500カ所ぐらいやっている。貯金ゼロではじめて、今でも貯金ゼロ。自分がやりたい事をやりたい方法でやるっていうほうが先だと思う。」


Q.フードワゴンビジネスを成功させる為に重要な事は?

黒崎さん「ビジネス街で見られる“ランチ難民”のように、都市型の地域の課題をクリアするということもあるが、“こだわりの食”を食べてもらいたいという想いが大切だと思う。おいしいものをつくれば、地域の人も納得してもらえると思っている。色んなお店があるからその全体がにぎわっている。246COMMONでは地域の人が集まってみんなでいいものをつくっていくっていう相乗効果があればいいと思う。自分はこの場所がいいとかではなく、それぞれの欲を抑えることで上手くやって行くっていう感覚。」

水野さん「インドでは修行をやったりストリートフードがものすごいもりあがっている。日本はまだまだこれからなのかも。日本では区画で割って権利を主張する、っていうものがある。まずは場を手に入れる事が大事。その点で黒崎さんは場を提供しているのはすごいと思う。フードワゴンをやって文句のでない場所、チャレンジできる場所っていうのがあるのは幸せなことだと感じる。結果、お客さんが集まるかどうかはそれぞれのお店の努力。」


Qフードワゴンのフランチャイズ、イベント化に関してどう思うか?

「レシピ共通にしてとか、ビジネスの違った次元での楽しみ方もできるし、他店舗化が悪いとも思わない。ただ、個性が失われたりっていうこともあるので、フランチャイズは難しいと思う。ただ、最初からそのつもりで取り組むのならいいと思う。世田谷ものづくり学校でフードビジネスの講座をやった時があった。生徒同士で話が盛り上がって、食品メーカーの人と2人ではじめた代々木のキャンプっていうのがある。キャンプはフランチャイズをつくりはじめたんだけど、最初から何店舗からやりたいと思っていたし、最初から海外で青写真を描いていた。味を統一させる為に食品メーカーでソースをつくってもらったっていうところがいい。」


街中にあるフードワゴンはオシャレなデザインで、味もレストランやカフェで食べるのと同様に美味しい。その秘密を知れた様な授業でした。また、どんな想いでやっているのか?作り手のこだわりを聞いてみるのもひとつの楽しみ方だなあと感じられました。

(ボランティアスタッフ/花輪むつ美)