シブヤ大学

授業レポート

2012/12/7 UP

YES or NO 〜災害時のアナタの選択肢〜

もし、あなたが“救急隊員”だったら…
「助かりそうな大人、心肺停止の子ども、子どもから運ぶ?」

この問いを見たとき、「究極の選択だな…」と思いました。
今私たちがいる、平和な渋谷の街では、上のような問いを突きつけられることは、まずありません。
だけど、もし巨大地震が起こったら、実際にこういう選択を迫られる場面が出てくるのです。

この授業で取り上げられた“クロスロード”というゲームは、上のような問いに対して、「Yes」または「No」で答える、というものです。

他の問いをいくつか紹介しましょう。

もし、あなたが“父親”であり、“企業の課長”だったら…
「会社で地震が起き、家族と連絡不通だったら、仕事を優先する?」

もし、あなたが“母親”だったら…
「子どもを学校に迎えに行く途中、生き埋めの人を見つけたら、助ける?」

もし、あなたが“被災者”だったら…
「避難所で集団生活をしている時、みんなの前で、非常持ち出し袋を開ける?」

これらはどれも、阪神淡路大震災の時に、実際に発生した問題だそうです。
そして共通することは、どの問いにも“正解”はないということです。
ゲーム内では、「Yes」を選んだ人、「No」を選んだ人、それぞれが、自分がなぜそのような選択をしたのかを説明しました。

例えば、「避難所で集団生活をしている時、みんなの前で、非常持ち出し袋を開ける?」という問に対して、
「Yes」を選んだ人…自分の持っている食料を、避難所の皆でシェアしようと思う。
「No」を選んだ人…波風を立てたくないので、目立つ行動は取りたくない。

これって、避難所にいる人数、そして集団内の信頼関係によっても、かなり左右されますよね。
人数が10人なのか100人なのか、知り合いなのか他人なのか、によって、答えも変わってくると思います。
このように、どの問いも、細かい状況設定次第では、「Yes」にも「No」にもなり得るんです。
“正解”がないからこそ、大事になるのが“状況判断”なのです。

このゲームのもう一つの特色は、「もし、あなたが“課長”だったら?」、「“母親”だったら?」、「“救急隊員”だったら?」というように、自分ではない誰かの立場になって考える、ということです。
それぞれの立場でシミュレーションすることによって、実際に被災した時の混乱の中でも、相手の立場を考えられるような練習になるのです。

最近は“ハザードマップ”と呼ばれる防災地図が進化してきていて、津波の際の、波の動き、時間経過と犠牲者数のシミュレーションもできるようになってきました。
といっても、あくまでもシミュレーションであり、“絶対”ではありません。

科学的なデータを“情報”として頭に入れつつ、実際に災害が起きたときには、目の前の“状況”を見て“判断”する。
起きるかもしれないいろいろな事態を“想定”して、対処方法を考えておくことで、いざというときの“判断”がスムーズになる。

「“想定外”から“想定内”へ。」
もしもの時のために、これが大切だということを学びました。


(ボランティアスタッフ:田中万里子)