シブヤ大学

授業レポート

2012/10/2 UP

見ないで遊ぶワークショップ feat.白根ゆたんぽ <粘土であそぶ編>

「目の見えない生活」がどんなものか、考えたことはありますか?
視覚が閉ざされた真っ暗な世界を感じたことはありますか?

本授業、「見ないで遊ぶワークショップ<粘土で遊ぶ編>」は、イラストレーターの白根ゆたんぽさんを講師としてお招きし、
アイマスクで目隠しした状態で粘土遊びを体験しました。

アイマスクを装着した後の生徒さん達の反応は様々。
怖いと感じる者、平然としている者と、様々です。はじめは慣れなかった生徒さん達も次第に「目の見えない世界」を楽しんでいました。

最初の課題は、隣にいる人とおしゃべりをしながら、粘土で相手のフィギュアを作るというもの。
教室に入る際になんとなく見ていた顔ですが、初対面同士のため、正確な姿形を覚えていません。
話しながら、お互いの特徴を確認し、フィギュアを完成させました。中にはお互いの顔を触って輪郭を確認し合うグループもいました。

目隠しを外し、作ったフィギュアを見た生徒さんたちの反応は驚きに満ちていました。
「自分が想像していたフィギュアより大きかった。」
「身体が平べったくなってしまった。」などの声がありました。

次は3人1組となってペンギン、トラなど、
白根さんが指定した動物を目隠しして作りました。
3人で協力しながら1匹の動物を完成させているグループや、何匹も同じ動物を作ったり、
池などの付属品を作っているグループなど生徒さんの個性が光っていました。

次に、隣りのグループが作った動物を交換し、
それを架空の動物に作り替えるというワークを行いました。
はじめは、仲間が作った作品を壊すことに抵抗感を持っていた生徒さん達でしたが、
次第に思いのままに手を動かし、和気藹々とした雰囲気の中で、
得体の知れない動物を作り上げていきました。

最後は、今まで作ったフィギュアや動物を好きな配置に並べ、動物園の完成!

皆さん、視覚が閉ざされた制約がある中で完成させた架空の動物園を見て、
達成感に浸っていました。

生徒さん同士でワークショップの感想を共有したところ、多くの方々が最初は見えない世界に違和感を覚えていましたが、粘土づくりに夢中になったら見えないことをすっかり忘れていたと口を揃えました。
目が見えないことで、神経を研ぎ澄まし、より想像力を働かせられたのではないでしょうか。
中には、視界が閉ざされた世界を体験したことでいかに普段モノをちゃんと見ていないことを思い知った生徒さんもいました。
ヒトも動物もいざ作ろうと思っても特徴が思い浮かびません。

この授業で、生徒さんひとりひとりなんらかの気づきがあったでしょう。その発見は、
・目が見えないからよかったこと(例えば、完璧にフィギュアを作ろうと思わず、思いのままに手を動かせる点)と
・目が見えないから不便だったこと(例えば粘土の大きさや距離感を掴めないなど)
に分けられます。
楽しかったことを思い出として心にしまうことも大事ですが、
特に不便だと思った感覚を忘れないで欲しいです。

この経験は、普段外で視覚障がい者が困っている姿を見かけたときに、
彼らの目線になって助けることが出来るからです。

他者への思いやり。
視覚が閉ざされた空間を実際に経験することで、初めて身につくのではないでしょうか。

(ボランティアスタッフ:矢永奈穂)