シブヤ大学

授業レポート

2011/10/21 UP

マイクロファイナンスのある世界

【イントロダクション】

地球上の人口の約60億人の20%に当たる約12億人の人は一日平均1ドル以下で生活をしています。最近の円ドル相場からいくと、日本では自動販売機で缶ジュース1本も買えないことになります。

そんな貧困層が主に生活している開発途上国の一般の銀行は、担保や客観的な信頼がある富裕層のみに貸付を行っています。貧しい人びとは、自分の仕事に必要な少しのお金を得るために、法外な金利にもかかわらず非合法な高利貸しを頼ることしかできない状況でした。そこで、マイクロファイナンス(貧困層向けの小口金融)という貧困者にお金を貸すことで、彼らの自立をサポートし、貧困の削減という社会的課題の解決に貢献できる貧困層向けのサービスが誕生しました。


【マイクロファイナンスゲーム】

今回はそんなマイクロファイナンスがどのように途上国の人々の生活を支え、生計向上や生活改善に貢献しているのだろうということを実際に“カンボジアの畜産農家”になって、モノポリー的なゲームを体験しながら学びました。

各チーム合計8回サイコロを振り、最後に飼っている家畜を現金に換え、手持ちのお金が多いチームの優勝です。

はじめに各チーム初期費用として30,000円が配られ、それを元に家畜(牛・豚・鳥)の売買を行いながら上手く事業を回していき、貧困を脱出するというものです。

牛・豚・鳥はそれぞれにサイコロの出目によって得られる利益が決まっていて(6が一番高く、1が一番低い)、鳥→豚→牛の順番にリスクとリターンの割合が高まります。

牛をなるべく多く飼ってハイリスク・ハイリターンで臨むチームや牛・豚・鳥をバランスよく飼うチームなど各チームが独自の戦略を練り、いよいよ新しい生活が始まりました。

初めはやや静かだった教室もゲームが進むにつれて、
「やった6がでた。収入が増える!」とか「やばい。狂牛病のイベント発生で牛が3分の1失われた・・・」などなど、会場のテンションがどんどん上がっていくのを感じました。

多くのチームが初めて経験する中で苦戦を強いられていたので、期中に臨時のボーナスが20,000円出た時には「助かった!」と喜びの声が上がりました。

そして、事業開始から2年が過ぎ・・・、
優勝チームはなんと約26万円にも資産が増えました!初めは3万円からスタートした新規事業も2年後には見事、持続可能なビジネスに成長しました。

優勝の要因は積極的に投資し、事業を拡大していったとのことでした。サイコロの目は平均して6チームの中でも低い方でしたが、将来性を見込んで打って出ていった結果、「融資→投資(事業拡大)→返済→融資→投資(事業拡大)→返済」という正のスパイラルを見事に創り出しました。


【まとめ】

・貧困の罠
・初期資本と金融の大切さ
・リスク分散
・支援の必要なとき


この授業を通して、私は改めてお金の大切さを学びました。
一度に貧困層が借りられる額はわずか数100円程度。私達の普段の生活からは想像もできないでしょう。しかし、このわずかな融資を受けることによって、農作物の栽培から販売、工芸品の開発など新規事業を立ち上げ、彼らが自立でき、持続可能な体制を構築できているのです。

最後にお土産として授業で使用した牛・豚・鳥の消しゴムを生徒さんに渡しました。
これを見て、この授業で学んだこと・感じたことを思い出し、小さな種がやがては大きな実になることを信じながら貧困削減のために自分ができることを考え、行動し続けて欲しいと思います。

(ボランティアスタッフ 南貴博)
※マイクロファイナンスに関する説明の一部は、
今回の先生である「Living in Peace」のホームページより抜粋しています。