シブヤ大学

授業レポート

2011/7/20 UP

接着は材料3割、テクニック7割! 渡辺教授の接着概論~接着剤の「?」を、教えて!ハンズ!~

モノを作る時、そして修理する時に欠かせないアイテム、接着剤。
毎日の生活に欠かせないものというよりも、何かの時に必要になるものです。
つい、家にあるもので間に合わせようとしては、うまくくっつかずにガッカリすることも。
また、小さな店では木工用ボンドとアロンアルファくらいしか売られていなかったりしますが、
ここ東急ハンズでは、接着剤が品数豊富にずらりと並んでおり、圧倒されるほど。
あまりに数が多すぎて、何を選べばいいのか、わかりません。
そこで今回は、接着剤の「?」を、教えて!ハンズ!

教えてくれるのは、ハンズDIYアドバイザーの渡辺守さん、そして松井昌孝さん。
「この時間は、目と耳と手をフル回転してね」という渡辺さんの言葉通り、
講義を受けながらどんどん自分で実験していきます。
気さくな渡辺さんは、私の髪に目を留めて「長い髪の毛は、くっついてしまうと取れないから、まとめておいてね」
と言ってくれました。
「くっついちゃったら、もう切るしかないから」
接着剤って、どれだけ強力なんだろう、と、緊張します。

まずは、接着剤の上手な使い方について教わりました。
「ちゃんと裏に書かれた説明書を読むこと」だそうです。
えっ、そんなこと?と思いがちですが、これがとても大切なことなんだそうな。
どんな性質のものなのか、何につけたらいけないのか、など、なんでも書かれているそうです。
確かに、接着剤を買ったら、ろくに説明書も読まずにすぐ使い始めていましたが、
それだと効果的な使用法を学べていなかったんですね。
「どの製品も、最終的には試してみないとわかりませんよ」と渡辺さん。
まだまだ、接着剤の世界は、開発途中。常に実験できるチャンスにあふれています。

解説を受けてから、実際に接着剤を使ってみます。
10cm正方形のアクリル板に接着剤「セメダイン スーパーXG」をつけ、
ガラスビーズをふんだんに散らして、重しを乗せました。
どんな接着剤も、一日置かないとダメだそうです。
くっついたと思っても、単に動かなくなっただけの状態なんだとか。
授業の最後までこのままにしておくことにして、次は接着のメカニズムについて教わりました。
機械的結合、物理的相互作用、化学的相互作用などありますが、
つまりは氷と同じように、液体が固体になる段階でなじむ特性を利用したものが接着剤だということです。

講義の後に、次の作業に入りました。
作業机に所せましと並べられた材料の数々は、
プラスチック、シリコン、ゴム、鉄、布、石、タイル、アクリル板、発泡スチロール、皮、塩ビシートなど、
全12種類。
さらに、接着剤は、なんと27種類。こんなにあるんですねー。
水性エマルジョン、溶剤系、弾性、ホットメルト、瞬間接着剤、エポキシ樹脂、溶剤系などに分類されていました。

いろいろな材料をサンドペーパーにかけてから、好きな接着剤を使って、くっつけていきます。
ちなみにサンドペーパーをかけるのは、表面積をふやすためだとのこと。
それを、参加者めいめいに配られた「接着剤実験用プレート」にどんどん貼っていくのです。

今回の参加者は、修理など必要に応じて使う人から、
プラモデルやデコもの、手作り作品などの制作に活用している人まで、
接着剤との付き合い方はいろいろでしたが、あまりに種類豊富な接着剤コレクションに、みんな圧倒され、
なかなか手が出ません。
それでも、布に強いもの、鉄に向いているものなど、
用途を見ながら少しずつ新しい接着剤を使い始めていきました。

接着剤は、出したら固まる前にすぐにくっつけないと、と思っていましたが、
いきなりつけてはいけないんだそうですね。
時間をおいてからくっつけないと、なかなか固まらず、硬化時間がかかってしまうものもあるそうです。
石にはなにがいいかと尋ねたところ、お勧めしてもらったものは、2本を混ぜる「クイックメンダー」でした。
上級者向きすぎて、自分ではまず敬遠してしまうだろうものですが、
これもいい機会なので、勇気を出して混ぜてみました。
なんだかこれだけでも、日曜大工感が高まります。
石と木がしっかりくっつきました。

アクリル板を繋ぎ合せる時に使う「アクリサンデー接着剤」は、
スポイトに取った液体を、ほんの少量だけつなぎ目に流し込みます。
すると、樹脂が溶けてぴったりと接着するのです。
市販のアクリル箱の継ぎ目にも、同様の接着剤が使われているそうです。

しばらくたってからふと気が付きました。
(あれ、全然におわない。)
さんざんいろいろな接着剤を使っているのに、
いつも、セメダインを出すたびにツンと鼻をついたシンナー臭がまったくしません。
最近の接着剤は、におわないし、環境に配慮したものに改良されているそうです。
どんどん使いやすくなってきているんですね。

はじめはおっかなびっくり、周りを見回してばかりの参加者たちでしたが、
そのうちに作業に夢中になり、黙々と手を動かしていきました。

質問コーナーでは「先生方の、一番お気に入りの接着剤は?」という問いが出ました。
渡辺さんは乾くのが速いスーパーXG、
松井さんは万能的なクイックメンダー、
当日、急遽アシスタントに入ってくださった市川さんはマニア心を刺激されるホットメルトと、教えてもらいました。

最後に、講義初めに作ったアクリル板を取り出します。
きちんと接着剤がついて、夏らしい爽やかなコースターが出来上がりました。

お試しにちょっと使ってみるというようなことが、普段はなかなかできない接着剤を、
先生方に教えてもらいながらあれこれ試してみることができた、いい機会でした。
これから接着剤を買う時には、かなり細かく選べそうですし、
わからなくなったら、フロアアドバイザーに質問するのが一番ですね。
完全になにもわからない初心者の立場で参加しましたが、
終始笑顔を絶やさないハンズのみなさんに楽しく教えていただけたので、
今まで遠い存在だった接着剤が、ぐっと身近に感じられるようになりました。

(ボランティアスタッフ: 小野寺理香)