シブヤ大学

授業レポート

2006/12/27 UP

 

コミュニケーション・クリエイティブ学科(以下CC学科)の第二回目は、インターネット公開型の日記がテーマ。 ラジオ作家である山本さんが講義を行い、ところどころでCC学科の設立者箭内さんが補足や突っ込みを挟んでいく対談形式の授業です。CC学科の“自己ブランディング”という考え方については、本校にアップされている箭内さんの「CC学科設立インタビュー」をご覧ください。

■ブログやSNS日記の特徴
まず、なんで日記を使うのか。山本さんによると、結局、日付さえ入っていれば「日記」って成立するワケで、これはかなり遊べる道具だということ。実際にパソコン上の強みって、画像や音声、動画やアプリまで。自由度の高い表現力があります。他方で――有名人は別として、ぼくら一般人は――インターネット公開日記の読者が、現実の友人関係に近くなりやすいので、すぐにネタが尽きてしまうなんてことも。地元のラーメン屋が美味いなんて、みんなが知ってることはちっとも面白くないんです。これは、交換日記と似た特徴でもあります。この結果、無意味なギャグや、プチ自慢が横行することもしばしば。うーむ、身に覚えがございます。もしただ読者コメントやアクセスを増やすだけならば、正直、Hな話か犬猫のことについて語ればいいんだ、とも。

■日記のコミュニケーション
それでは“自分”をより正確に、より魅力的に伝えるためにどんな工夫があるのか。山本さんが伝授するポイントはふたつ。
〔1〕「自分」をありのままに表現してしまう
〔2〕読者の反応を待つのではなく、積極的に読者を巻き込んでしまう

〔1〕は、「どこどこのサイトが面白いよー」とか書くよりも、思い切って自分のサイト閲覧履歴をまるごと公開してしてしまえ、というような発想。ニュースサイト見た後にエロサイト寄ってたりとか(笑)。顔の写真を毎日アップするのも、体調や出来事にあわせて現れる変化が面白い。匿名性を一歩譲って、これまでにない日記を実現しちゃうアイデアに驚きました。〔2〕は外部の人間を参加させてしまう手法。自分の明日の行動をみんなに選ばせたり、友人に自分をインタビューさせたり。これまた斬新。複数の目から見た自分が描き出されると、読者に対して、表もウラある立体的な自己表現ができるかもしれません。他人の目を意識して文章を書くことについても、山本さんの熱い語りがありました。「人に見せる日記を書けない人なんていない」。ノートの日記だって、将来の自分を読者に想定したり、自分がいつか有名人になって伝記の資料に使われたり、好きな人に見つかっちゃったりすることを心密かに想定しているワケで。個人的な体験すらも「字にした瞬間、自分から離れた存在になるんです」。なるほど。確かに、考えや思いを文字や言葉に置き換えるということは、毎日みんながやっていることです。「よーするに、文章の才能とか表現のセンスとかはいっさい考えなくていい。ごく一部の天才は除いて、みんな工夫を重ねてユニークな表現を見つけていくんですよ」箭内さんがまったりと補足。「大切なのは表現を『アンプレッション』すること。コレは『インプレッション』と『アンプリファイ』を合わせた言葉で、赤いリンゴを見たらその“赤さ”を1.5倍くらいにして伝えようということ。それ以外の細かい点は捨ててしまうこともときには必要なんだ」とも。コミュニケーションするインターネット公開の日記には、ふつうの日記とはまったく違う可能性がある。なんとなく“日記”の固定観念をもっていたけど、授業を通して、新しい手法も模索したいと思い始めました。日記の特性を解説し、斬新な書き方を提案してくださった山本さん。レポートには書けないような個人的な秘話で授業を盛り上げてくださった箭内さん。どうもありがとうございました。

(ボランティアスタッフ 松本浄)