シブヤ大学

授業レポート

2006/12/25 UP

 

外苑西通り沿いの《上海》という中華料理屋がある角を曲がってすぐ。「今日この日のために生まれたといっても過言ではない」と講師であるヒマナイヌの川井先生と猪蔵先生に言わしめるのは、会場であるwhite ROOM。オフィスとして使っていた一室を人と人が会う場所に特化させてしまおうとして改造したこの場所。杮落としであるこの日にやってくるのは、HPに掲載されたイラストマップを片手に持った14人の大学生。シブヤ大学史上最少人数の授業である「TOKYO WHITE MAP 〜みんなの好きな場所〜」。14人の学生が入るといっぱいになってしまうwhite ROOM。その分、先生との距離が近いことは言うまでも無い。少し緊張気味に見える先生の表情が、「あら、先生も緊張しているみたい」と初対面の人だらけの会場を安心させる。川井先生の問いかけに、猪蔵先生が合いの手を入れながら、ゆっくりと授業は始まった。「地図は『ある場所である』という情報を伝えている」「『ある場所』にはその場所が経験したことに基づいた、個々の記憶や記録があるはず」「そして、その記憶や記録が『ある場所』に対しての愛着を深めるのだと思う」地図や場所に対しての、そんな愛着を表現したいというのが授業のきっかけであると川井さんは言った。大学生達の自己紹介、様々な地図の紹介と授業は進み、大学生と先生の作業の時間になった。「さて、自分の地図をつくりましょう。みなさんはどんな場所を知っていますか、どんな場所によく行きますか」配られた首都圏の概略図に①自分のよくいる場所(住んでいる場所や職場や買い物によく行く場所)②大切な人がいる場所を色分けをして、塗っていく。池袋、新宿、新橋、恵比寿、横浜、下高井戸・・・。それぞれの大学生がそれぞれにとっての『ある場所』を色付けしていく。
「あちゃー、行動範囲が狭い」「家から随分離れたところに、色づけされていますね。それは大切な人ですか」わいわいと声が上がる。「大切な人がいる場所ということで色付けした『ある場所』は、その大切な人がいなくても意味を持つ場所ですか」

授業も後半戦へ。「みなさんの好きな場所。人に紹介したい場所はどこですか。今日はヒマナイヌの紹介したい場所、ここ神宮前を散歩します。
みなさんも散歩のガイドとして協力してください」ヒマナイヌチョイスの神宮前名所説明書きカードが配られ、散歩に出発。自分のカードに書かれた名所につくと、ガイドと化した大学生がアドリブつきで名所ご案内。「ここ明治公園、私もたまにフリーマーケットに来ます」「このビクター犬は・・・・」授業もまとめの時間に。散歩から帰ってきた一行は最後の発表会。「こんどはみなさんの好きな場所、紹介したい場所を教えてください」先生からの問いかけに生徒が答える時間。「大層な場所は紹介できないのですけど・・・」そんな前フリがバカらしくなるぐらいに、スラスラと魅力的な言葉を並べる大学生達。14人の大学生による、『ある場所』の紹介。『ある場所』への愛着がこもった情報。この紹介で、大学生一人一人には、14個の『ある場所』が増えたことになる。自分の知らない世界を知るきっかけ。そんな新しい地図を描いた授業だった。