シブヤ大学

授業レポート

2007/11/21 UP

                           

「雅楽を経験したことがある人は手を挙げてください。」

先生からの質問で始まった雅楽の授業。
手を挙げた人数はゼロ。集まった全員が雅楽初心者でした。
 
そもそも雅楽って何?初心者の僕らはそこから分かりません。
本日の先生、岩佐堅志先生はそんな僕らに分かりやすく雅楽を教えてくれました。

まずは雅楽の歴史。雅楽はもともと、聖徳太子の時代に朝鮮半島から伝わった仏教音楽だそう。僕のイメージでは雅楽は神社でやるものだから仏教ではなく、神道が起源の日本古来の音楽かと思っていました。しかし本当は仏教に起因する外来の音楽のようです。この頃から、音楽を専門にする一族ができ、東儀秀樹さんの東儀家などが現在も楽家として残っているそう。現在の雅楽の最高峰である宮内庁式部職楽部は701年の大宝律令の際にできた雅楽家(うたまいのつかさ)が始まりだそうです。その後現在まで、楽家を中心に伝承が行われて来ました。

このようにして、もともとは中国や朝鮮半島から持ち帰ってきた音楽でしたが、894年の遣唐使廃止により、国内で独自の発展をみせていくことになります。平安時代は貴族の文化として、また室町時代以降は武家の保護も受け、本家の中国では滅んでしまった雅楽は伝承されてきたのです。
 
歴史の年号や『大宝律令』などの名称が懐かしく、聞いていて学びの心をくすぐられました。先生の話の中には、歴史的背景にまつわる話に加えて、「調子悪い、という言葉の語源は雅楽の始めにチューニングの為に奏でる『調子』という曲」、「雅楽のチームのリーダーを『音頭』といいこれが、音頭を取る、などの語源」など、皆さんが「へえ~」と驚く知識がふんだんに盛り込まれ、とても勉強になりました。
 
歴史の後は、楽器。雅楽には管絃・舞楽・歌物という要素があり、雅楽奏者は皆全てのパートができるそうです。一つの楽器でも難しいのに、全てできるというのは驚きです。管には、龍笛(りゅうてき)・篳篥(ひちりき)・笙(しょう)の三種類が絃には琵琶と琴の2種類、舞には中国系の左舞(さのまい)・朝鮮系の右舞(うのまい)の2種類が・・・。覚えることがたくさんあって大変です。

雅楽の練習は楽器を実際に吹く前に、曲を覚える方法として唱歌というものを歌います。譜面を持たないで演奏するので歌えるようになってから楽器に移る。この唱歌を皆で歌いました。今回は譜面を見ながら練習。しかし譜面は読めません。<ラ>や<ト>などの文字が縦に並んでいて、まるで漢文の様でした。
 
唱歌の後は実際に楽器の演奏です。
数に限りがあったため希望者を募って楽器を実際に吹きました。龍笛(りゅうてき)と篳篥(ひちりき)音が出なくて悪戦苦闘。笙(しょう)は音が出ましたが、指の位置が複雑で、とても難しそうでした。
 
締めくくりは、先生による生演奏。龍笛(りゅうてき)・篳篥(ひちりき)・笙(しょう)の3つの楽器を使って演奏してくれました。テレビでは見たことがあっても生で聞くのは初めてで、その音の美しさに酔いしれました。

「はじまりの音。~雅な音を聴く~」は、知識を得ることの楽しさを心から感じることができた、有意義な授業でした。
楽しいだけじゃない、知識も得て帰れるのがシブヤ大学が大学たる意味なのではないでしょうか。

(ボランティアスタッフ 竹田芳幸)

【参加者インタビュー】
① 牛島さん(女性)
「実際に篳篥(ひちりき)を吹かせてもらいましたが、音が出なくて難しかったです。ピアノをやっていた経験がありますが、押せば音が出るピアノと違いとても難しい物だと思いました。
知らないことを知りたいと思いこの授業に参加してみましたが、拍子の取り方や楽器に対する考えなど、いまどきの常識とは大きく違って新鮮でした。」