シブヤ大学

授業レポート

2019/10/29 UP

移民(移動する人々)について考えよう! ~穏やかに変わりゆく社会の風景~

はじめは、是川先生から移民に関する数字的なデータのお話がありました。
印象深く残ったお話は、「日本は実は移民を結構受け入れている国だ」というお話でした。日本は実は年間約18万人の移民を受け入れているそうです。これは先進国では9位の受け入れ数です。
しかし、日本は移民の受け入れ数は少ない方だというイメージが一般的に強いかもしれません。そのようなイメージが強いのは、移民受け入れ数第一位のアメリカと比べているためであるというのが是川先生のご意見です。アメリカは諸外国と比べても桁違いの受け入れ数を記録しているのですが、そんなアメリカと比べてしまっているため日本はまだまだ移民の受け入れが進んでいないという印象になってしまうのです。


こうした数字やデータの視点から移民を読み取ったあと、今度は参加者同士で椅子ごと4人の輪になりました。
その際、「えんたくん」という道具を使い、「ワールドカフェ」という形式でグループディスカッションを行いました。


「えんたくん」とは、ダンボールを丸型に加工した商品です。それを膝の上に乗せ、さらにダンボールの上に置いた模造紙にペンで自由に書き込みながら話し合いができるというツールです。
「ワールドカフェ」とは、メンバーの組み合わせを変えながら、4~5人単位の小グループで話し合いを続けることにより、あたかも参加者全員が話し合っているような行為化の得られる会話の手法のことです。一つの円卓を囲った参加者たちはそれぞれの円卓に置かれた4種のカードに目を通しました。カードにはそれぞれ、移民に関する社会的関心が書かれています。一通り目を通したら、それらについて議論を交わす、という形で、移民をテーマにしたワールドカフェは始まりました。


最初は少し緊張した空気感で始まりましたが、自己紹介が終わっていざディスカッションが始まると、皆さん、それぞれの熱い思いや意見を語っていました。深くうなずく様子や、「へー!」「なるほど」といった声が聞こえてくるようになりました。


参加者の皆さんは、様々なバックグラウンドをお持ちでした。
海外に一年以上滞在した経験から、自分自身が移民だった方、外国人向けの日本語学校で働いている方、子供が通う幼稚園に外国人が多いことから移民に興味をもった方…。 私が皆さんのお話を聞いていて印象に残ったものがいくつかあります。


・外国人、特にアジア人に対する差別や偏見がすごい。そのことを日本人は知らなすぎる。
・韓国に対していいイメージはなかったが、実際に行ってみたらすごくいい印象に変わった。知らないから怖いっていう感情は無意識に生まれてしまうものだから知ることは大切。
・日本人自身が日本文化についてうまく話せていない。
・私たちは日ごろ無意識に過去の話をしがち。「昨日のドラマ見た?」「どこ中学?」など。でもそれらはいくら日本語が達者な外国人でも、話についていけなくなって孤立する。


授業後は、授業の参加者たちの約半分程の人たちが残ってランチをともにし、さらなる熱い意見交換会が繰り広げられました。身近になってきたようでまだまだ遠い存在の移民について、改めて考え、アウトプットするいい機会だったと思います。


(授業レポート:鴨志田和香奈)