シブヤ大学

授業レポート

2019/10/24 UP

3限目:タクシーの運転手さんから学ぶ、渋谷の街

13周年特別授業、3限目「裏側から学ぶ」のテーマは「タクシー運転手さんから学ぶ、渋谷の街」です。
シブヤ大学の授業と言えば、まずは自分が、“一人目の生徒”として特定の先生に授業のオファーを行うことが恒例となっていますが、この授業にはそのような特定の先生はいません。生徒の皆さんがその時に乗車し、出会ったタクシー運転手さんが先生になるという、まさに先の全く読めない授業の構成になっていました。つまりは、生徒さんがタクシー運転手さんと出会い、会話を始めたその瞬間から、オリジナルな一期一会の授業が作られていったといっていいでしょう。

まず初めに体育館に集まり、授業の概略やタイムスケジュール確認をします。
今回は恵比寿ガーデンプレイスにタクシーで自由なルートを使って行き、戻ってくるまでが課題です。生徒さんは同じタクシーに乗る二人一組のペアを組み、顔合わせ、お互いに授業に参加した経緯等を話し合ってもらいました。10人以下の生徒数だったため、かなりアットホームな雰囲気で進められていきました。


そして、いよいよ乗車です。青山通りや外苑西通り等、タクシーの乗車場所は自由に決められます。
私の班は外苑西通りでタクシーを捕まえようと試みました。しかし、想像以上に空車タクシーはやってきません。見かけるタクシーの数に反して、なかなか乗車することが出来なかったのです。待つことおよそ10分、最近多く見かけるようになってきたワゴンタイプの黒いタクシーが「空車」のランプをつけて私たちの前に止まりました。やっと乗車です。

「ご乗車ありがとうございます。どちらへ。」
「恵比寿駅の方へ、2,000円で行けるだけお願いします。」

私たちは金額指定まで行い目的地を伝えました。
そして、走り始めてからは、運転手さんに今回の授業の目的を伝えると、担当してくださった運転手さんは上野・湯島管轄であることがわかりました。これも一期一会の出会いです。どんな面白いお話が聞けるかワクワクドキドキしながら私たちは、「渋谷周辺を走ってみて何か面白いことに気が付いたり、他の地域に比べて変わっていることがあれば教えてください。」と尋ねてみました。すると、帰ってきた答えとしては、「渋谷は他の地域に比べて抜け道が少ない」ということ。この、タクシー運転手さんならではのまちのとらえ方に驚かされました。つまりは、抜け道が少ない分大通りを走ることになり、目的地までの運転コースのパターンが少ないということです。その後もタクシー運転手さんとのタクシーにまつわるまちのお話をたくさん聞くことが出来ました。

ここで、いくつか聞いてみておもしろいと感じたことをシェアします。

・日本のタクシーは今後「ジャパンタクシー」と呼ばれるワゴンタイプに切り替わっていくこと(特に東京ではその流れが顕著)
・ゆえにセダン型はなかなか見られなくなっていくこと
・「ジャパンタクシー」になった場合、どこでタクシー会社を見分けていくかというと、それは車体の上にある表示灯であるということ

このように、自分では普段なかなか知ることのない情報が、タクシー運転手さんからはどんどん聞くことが出来ます。そして、タクシーという空間の中で、まちを走りながら盛り上がれることのできるテーマのようにも思えます。
各チーム教室に戻ってきたところで、いよいよ共有の時間です。みんなが同じ場所に行ってきたにも関わらず、やはり乗車したタクシーとその運転手さんによってセレクトする道には差が出ます。壁一面の大きな渋谷区の地図に、各チームが辿ったルートと気づきを付箋で書き込み、発表していきました。限られた時間の中でも、各チーム独自のおもしろい体験ができたようです。

普段生活するまちを、今回はタクシーという手段を用いて捉えてみましたが、こんなにも驚きや発見の連続があるとは思いませんでした。一つの物事を違った視点で見つめなおし、捉えなおす。このプロセスにこそ、日常生活では見落としがちなおもしろい発見があるのかもしれません。
またタクシーという一期一会の出会いによって、「その時・その場」だからこその気づきは多く生まれていきます。今回の特別授業では、そんな、「まちを非日常化する」体験ができたのではないでしょうか。


(授業レポート:竹田憲一 / 写真:堀部奈々)