授業レポート

2019/6/19 UP

地域コミュニティ×公共空間
-公共空間を交流場所へ、外の場が持つ可能性とは?-

〈渋谷おとなりサンデー〉 地域コミュニティ×公共空間 


 


渋谷おとなりサンデー特別プログラム第二弾、近年話題となっている「公共空間」をテーマにした授業です。公共空間を活用した社会実験の例や、海外の公共空間に関する情報発信を行うソトノバのメンバーお二人をお招きしました。




前半は、石田さんによるパブリックスペースに関する学術的な側面、そしてなぜ今パブリックスペースが注目されているのかに関して、日本・海外の事例を交えつつお話していただきました。


後半は、泉山さんにタクティカルアーバニストとしての視点からのパブリックスペースの活用例、そして公共空間での社会実験やアクティビティ調査がもつ意味についてお話していただきました。


 


パブリックスペースとは?なぜ今パブリックスペース?


 


皆さんは、パブリックスペースというとどのような場所を思い浮かべますか。Publicとは日本語で「公」という意味ですが、象形文字で表した際には、「公」の「ム」の部分が広場、「ハ」の部分がそれを囲む塀という意味を表しているらしいです。


石田さんはパブリックスペースを「多様な人が多様な過ごし方のできる場」と捉えています。お金や階層、出身、身分等に関わらず様々なことが許容される場のことを指します。確かに、例に挙がっていたイタリアのヴェローナにある広場は、カフェやトラットリアに入らなければ立ち入ることはできないようで、このような場は限られた人のみに開かれた場であるといえます。


 


日本における過去のパブリックスペースの失敗例としては、新宿西口地下広場は1969年に「広場」から「道路」へと機能が書き換えられ、人々が立ち止まり、溜まるようなスペースが失われてしまったという歴史があります。一方、海外では“パブリックスペースを取り戻せ!“といった活動が行われ、ロンドンの「リクレイム・ザ・ストリート」、サンフランシスコの「クリティカル・マス」等の事例が挙げられました。


 


ここで、まとめとして、近年の国内外のパブリックスペースの活用は


➀地域活性化


➁環境改善


③交通渋滞の解消


➃社会的弱者の救済(特にアメリカ)


の4点にその重きが置かれているそうです。


 


また、パブリックスペースの活用は、ある種「社会実験」とも言えます。2008年からニューヨーク市では「プラザプログラム」という、車道や駐車レーンを歩行空間へと転換するなど、盛んな広場の整備がなされました。タイムズスクエアは完全に車道の消えた広場となり、その熱はニューヨーク全土で広がりを見せました。この試みの優れた点として、先に行われていた社会実験のデータを活用して、地域の人々のプラザプログラムへの理解を得ていったという点が挙げられます。


しかし、交通局に宛てるパブリックスペース活用のための資料一式を地域住民のみで作成していくことには限界があるのではないかという疑問が湧いてきます。実際のところ、そこまで複雑な作業ではないようで、Googleアースの写真を利用する等、現代はいくらでも表現する術はあるように思います。ソトノバさんが沼津で行った車道の一部歩行空間化の試みもその一例になります。シブヤ大学でも、渋谷おとなりサンデーに向けて、区に提出する資料一式の書き方をわかりやすくまとめた、パブリックスペース活用マニュアルを作成しています。身近なパブリックスペースの活用手順等、気になる方は参考にしてみるといいですね。


 


では、なぜ今の時代にこれだけパブリックスペースが注目されているのでしょう。それは以下のようにまとめることができます。


➀人の条件としての公の生活の豊かさを求めている=地域住民とのつながりに対する意識


➁都市のストックを生かすため(人口減少、少子高齢化)


③社会の場としての世代間交流


➃共感を得る空間づくり、コトづくりが作り手に求められている


⑤地域の価値を高めることができる


 


世は実験時代!


 


次に、先ほど登場した、「社会実験」と「イベント」の違いとはどのような点にあるのでしょうか。泉山さんは以下のように特徴づけます。


 

“日常を巡って”いく「社会実験」と、“一過性”な「イベント」


“仮説”を立てる「社会実験」と、立てない「イベント」


“検証”を行う「社会実験」と、行わない「イベント」


“次に繋げる”「社会実験」と、“現状維持”な「イベント」


 


「社会実験」とは、仮説を立て、データ計測し、検証を行っていくというサイクルを繰り返すことに価値が置かれています。


 


そして、“public life”とは、ハードな建築面としての「空間」・移動が可能な「場」・多様な行動をする「人」の3要素で構成されます。“都市でくつろぐ”というのはまさに、日常の場所が何気なく人々のライフスタイルに寄り添うような感覚のことをいうのかもしれません。リビングに居るような感じで人々が街でくつろぐことができればそれこそ、目指すべきパブリックスペースの活用だとおっしゃっていました。そして、創造的な“place making”には「place capital=場の関係資本」という考え方が大切になってきます。若者、高齢者、ファミリー等、一人一人が場に対するテーマを持ち、それらが同じ場で共有され、すべての人々の抱く価値が最大化することこそが“place making”の本質なのです。


 


泉山さんは最後に、「タクティカルアーバニズム」という考え方を紹介してくださいました。それは、“長期的変化のための短期的変化“であり、まさに「社会実験」が、その鍵になってきます。いきなり道路や建物の整備といったハード面から”place making”を試みるのではなく、➀アイデアを創出し、②実験やプロジェクトを遂行、それを③データ化するというサイクルが、まず必要なのです。


 


日常に“場”は無数と存在しています。私たちは、そのような場における新たな価値創出のためのplannerやdesignerでもあります。慌ただしく、どこか窮屈で退屈な日々を過ごす中で、人とのつながりが何気なく自然と溢れていく、そんな場が増えていったら日常生活にどのような新しい風をもたらしてくれるのでしょう。皆さんも日常の公共空間、何気ない場に着目しながら日々、過ごしてみてはいかがでしょうか。


石田さん、泉山さん、興味深いお話をありがとうございました!


“日本にもっと日常的なストリートライフを過ごせる場所を。”


(レポ―ト:堀部奈々)