シブヤ大学

授業レポート

2019/2/20 UP

ようこそ!デスカフェ

“死”を語り合うこと。それは少し勇気のいること。
でも、私たちは人間。だから突然、明日にでも“死”を迎えてもおかしくない。

あなたにとって、“死”とはどんな存在ですか?

12月15日土曜日、冷たい北風が本格的な冬の訪れを実感させる、そんな日に、「デスカフェ」という聞きなれないカフェが恵比寿社会教育館にてオープンしました。
続々と参加者が到着し、幅広い年代の方々。



まずは授業を作り上げた竹島さんのお話から。
自身の体験を交えながら、デスカフェに対する思いを語って下さいました。

講師には一柳弘子先生をお招きしました。
はじめに、先生からのお話として、ご自身の死生学を学ぶきっかけや現在活動していること、そして、今回のテーマである「デスカフェ」についてもその歴史や趣旨等を語っていただきました。

デスカフェはスイスの社会学者が自分の妻の死をきっかけに、気軽に死を語り合える場として始めたcafé mortelが起源とされています。英国で広がりを見せてから、現在では、欧米中心に多くの国で開かれている語らいの場だそうです。

日本でも60~70年代頃から“よりよく生きることを考える”分野として、「死生学」の研究が盛んに行われるようになり、死の存在をよりポジティブにとらえ始める運動も広がりを見せました。

“死の地点から今を見て欲しい” 
“人生という物語を紡ぐということ”

先生の言葉にあるように、死を通して新たな今と未来が見えてくるかもしれない。
そして、死を語り合うことは、死に対する恐怖や不安からの解放も意味しているのかもしれない。

今回、デスカフェは“気軽に死を語り合う”ということで、参加者がいくつかのグループに分かれ、それぞれのテーブルで飲み物とお菓子をつまみながら自由に話す、というカフェ形式で進んでいきました。
はじめに、参加者全員に「今の自分の気持ちリスト」を作成してもらい、簡単に自分を見つめ直してもらいました。
何歳まで生きたいか、最期の瞬間はどこで・誰と・どのように迎えたいか、死ぬまでにやってみたいこと、5年後の自分に宛てたメッセージ、遺産相続や棺の中身まで多様な質問で構成されたワークシートに向き合います。

その後、グループワークの時間として、各自どんなことを書いたのか、互いに簡単にシェア。
普段、あまりオープンに話せる内容ではないからこそ、デスカフェではその話題に皆さん話が尽きません。

こんなにも互いに興味深く、熱心に語れる話題だったのか!と私自身も参加者の方々の楽しく、時に真剣にお話される様子に釘付けになってしまいました。実に興味深いテーマだったので。

話が盛り上がる中で、一旦休憩の時間を挟みます。しばし憩いの時間。
皆さん、初めに比べたらかなり打ち解けて、リラックスされている様子でした。

メンバーチェンジも行い、グループワーク第二弾。一回目のグループワークで気になったことも交えながら再び意見交換、というよりも正にカフェ空間。皆さん自由に、心に思うことを気軽に話す空間が出来上がっていたように思います。



第二弾も大盛り上がりで終了しました。
最後に、参加者自身が、授業を振り返っての「自分に向けたメッセージカード」を作成。
デスカフェを通して感じた、心に留めておきたいことやこれからの抱負等、思い思いの言葉をカードに残していきます。そして、参加者数名に、授業を通しての思いや感想も共有していただきました。

私たちが生きる現代は、「個の時代」ともいわれるように、一人一人が自分の生き方に責任を持つ場面が多くなっているように感じます。それはある意味、個人が自分自身で、自分の人生をデザインしていく必要性が強まったことを示しているのかもしれません。今を生きる視点から人生を見つめることだけでなく、皆誰もが迎える“死”の視点に立って人生・自己を見つめてみる、そんな瞬間に今・未来の人生をより良くするためのヒントが隠されているかもしれません。
参加者の皆さん、一柳先生、そして授業を作り上げてくださった竹島さんをはじめとするスタッフの方々、素敵で新鮮な授業、そして語り合いの場をありがとうございました。

(レポート:堀部奈々、写真:中野恵里香)