シブヤ大学

授業レポート

2007/11/6 UP

「この言葉どこの子? 自分の子」

なにやらシブヤ大学で「カイブン」の授業が行なわれるらしい…。
「刑事ドラマで目にする、怪文書作成方法の授業…?」と聞いて、ドキドキされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。わかります、その気持ち…。しかし、「カイブン」違い。
“上から読んでも下から読んでも同じ文章の「回文」。” 今回はそんな回文の授業です。

シブヤ大学のボランティアスタッフでもある、松本先生と竹田先生。
ちょっぴりマニアックな趣味も、極めると授業になるんですね。
そんなお二人からまず、生徒さんへ質問です。

「この中に回文をつくったことがある方はいますか?」        

しーん。

どうやら生徒さんたちの中に回文経験者はいない様子。しかし、その質問…なんだか弱気!弱気です、先生たち。

平安時代の末期には文献に登場していた回文。文字の発音や音の清濁をどう扱うかについて実は細かいルールが存在しています。しかし、今回は回文入門編ということで、細かいことは気にせず回文ワールドを楽しみましょう!

さて、ここで授業内に紹介された先生たちがつくった回文を一部ご紹介します。

【力士が貸切】 (どこを?)
【単なるありがとうとかリアルなんだ】 (ちょっぴりクサいことも回文なら言える)
【今回は2倍頑固】 (なんだか厄介)
【ダラダラだ】 (…お疲れ様です)

ツッコミどころいっぱい。みなさんも思い思いにツッコミを入れてみましょう。

いよいよ、みんなで回文作りに挑戦!5~6人1グループで回文作りに取り組みます。
トマトのように、単体で最小の回文となる言葉を「トマト語」。
また、ミルクはひっくり返すとクルミ。逆さに読むと別のものに変身する言葉をここでは「ミルク語」と呼びます。
これらを探すと意外と簡単に回文が出来ます。
…など、先生から回文をつくるためのコツや秘儀を教えてもらった生徒さんたちですが、初の回文作りに「できるのだろうか…?」と不安そう。

しかし、時間が経つにつれて、手元に配られた回文作成用紙に書き出される言葉は多種多様、十人十色、個性爆発です。動物の名前ばかり書き連ねる方、最近何か嫌なことありました…?というようなダークな言葉が並んでいる方…。先生のアドバイスを受けながら、徐々に「出来た!」という声が教室に上がり始めます。

うみ出された回文はちょっと話しただけではわからなかった、その人の内面が出ていて非常に興味深い。この人から、この回文が…?!と驚きながらも、しっくりくるのは、もしかしたら本人も自覚していない個性が勝手に回文に反映されるからかもしれません。

授業の後半で、作った回文を発表し合い、先生による特別賞が選ばれました。

松本賞 【道路は英語言えばロード】
竹田賞 【チンパンジー老人パンチ】

本当に皆さん回文初心者だったのか?というような出来ばえです。
でも、凶暴なチンパンジーには要注意ですね。

先生二人が語る回文の魅力… 

①いつでもどこでも遊べちゃう。
②友達に自慢できちゃう。
③知らないうちに個性が出ちゃう。

紙とペン、もしくはケータイがあればどこでも回文で遊べます。
また、言葉というわたしたちが普段何気なく使っているものだからこそ、その用い方で人に驚きを与えることができます。そして、回文を形成する「言葉」は、そのときあなたが触れているもの、感じている世界を映し、自然とあなたの個性がにじみ出ているはずです。

気合いを入れてつくった回文より、何気なく浮かんだ言葉で出来たものの方が、月日が経ったときに振り返って、「この回文をつくったときこんなことを考えていたんだなぁ」と、その記憶が呼び起こされるもの。それはある曲を聴くと、一緒にいた人や場所、そのときの気持ちが鮮明によみがえってくるのと似た感覚。

言葉はそのまま自分自身。回文という言葉遊びによって、もしかしたらあなたも気付いていなかった自分に出逢うことができるかもしれません。
さあ、皆さん力を抜いて、ゆる~く回文をつくってみましょう!

(ボランティアスタッフ 中里希)

【参加者インタビュー】
1.実は回文のストック持参で出席した典子さん
(今日の回文:寿司で死す)
面白い授業ないかなぁと探していて参加しました。アットホームで、手作り感がとても良かったです。

2.自分で気付かなかった感情を知った妙さん
(今日の回文:「ダンカン噛んだ」)
友人に誘われて参加しました。日頃全く考えていなかったことだったので、面白かった。わたしの潜在的なダンカンへの想いが回文に表れてしまったようです。