授業レポート

2018/11/26 UP

自分の取扱説明書からみる周囲との向き合い方 -双極性障害とそれを支える家族の経験から-

今日の授業は「自分の取扱説明書からみる周囲との向き合い方 - 双極性障害とそれを支える家庭の経験から」です。 恵比寿社会教育館にある和室での授業です。



はじめに、この授業を作ったコーディネーターの平林さんからの挨拶です。



身近にうつ病から社会復帰した人がいて、その人の力になりたいと思ったけれど、どう接すればいいか戸惑っているうちにうちにその人は辞めてしまった、という経験をしたそうです。その時自分は何をすればよかったのか。そのヒントを得るために、この授業を作られたそうです。

双極性障害とは? 〜当事者から見た双極性障害〜
今日の授業の先生は、「双極性障害極め人」松浦秀俊さんです。21歳のときに双極性障害を発症し、その後転職や休職を経て、現在は双極性障害などの当事者が社会に復帰するための支援をされている方です。この病気についてまだまだ世間で知られてないと感じていて、それを伝える場所がないかと考えているときにシブヤ大学を知り、今回先生として登壇することになったそうです。はじめに松浦さんから、双極性障害がどういうものか、お話を伺います。



双極性障害とは、感情の浮き沈みを超えた、自分ではコントロールできないほどの「躁状態」「うつ状態」を繰り返すことで、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることによって起こると言われています。うつ病と混合されることがありますが、症状は異なり、対処法も異なるそうです。松浦さん自身、はじめはうつ病と診断され、その後双極性障害と分かるまで7年かかったそうです。うつ状態のときには仕事が楽しめずに辞め、躁状態のときには新しいことがやりたくなって仕事を辞める、という具合に、転職や休職を繰り返してきたそうです。「自分は社会不適合者なのではないか」と苦しんでいたとき、初めて自分と同じ双極性障害の人に会ったことで、自分自身を客観視することができたそうです。そのとき、自分自身ではなく病気がそうさせているのだ、と感じたことで、自身を受け入れることができたそうです。今は病気を開示して働いているという松浦さん。継続的な治療、自己理解による行動抑制とともに、悩みを打ち分けられる家族、上司、友達の存在が大切だと言います。

妻から見た双極性障害
続いて、松浦さんの奥様から、家族からの視点でお話いただきました。出会ったときの松浦さんの印象は「やる気溢れるビジネスマン」。その後、病気のことを知っても特に実感はなく、結婚にも全く躊躇はなかったそうです。それでも、結婚してみると「これは一筋縄ではいかないな」と感じたそうです。普段は温厚で誰とでもコミュニケーションをとる松浦さんですが、うつ状態の時は部屋に引きこもり、ご飯も食べずに「ああ」「うん」くらいしか言葉を発しなくなるそうで、そういう時は奥様自身もその状態に巻き込まれてしまいそうになったと言います。

子供が生まれ、慣れない子育ての日々に疲れてイライラが募っていく中で、ある日イライラに任せてつい家の鍵を籠に投げつけてしまったとき、「自分自身がそんな状態では、この家が楽しくなってしまう。子供や家族を支えるためにも、何より自分自身を大切にしなければならない」と感じ、それによって楽になったそうです。

奥様が家族として工夫していることの1つは、周りから客観的に見た夫の状態を、本人にきちんと伝えること。そしてもう1つは、夫に夫自身の状態を共有してもらうことです。そうやってお互いに伝え合うことが、お互いの安心につながるそうです。「大変なことはあるけれど、普通の家族だったら話さないことでも伝え合っている。病気がもたらしてくれるコミュニケーションがあるなと感じます。彼の人生は彼のもの、自分の人生は自分のもの。自分をいたわったうえで、相手に対して自分にできることを考えたほうが、お互いに楽しく生きられる」と奥様。松浦さんについては、「なんだかんだで、楽しそうに見える」とのことでした。

リソースマップを作ろう 〜自分の取り扱い説明書〜
後半は、ワークショップの時間です。自分自身と資源との相関関係を図式化した「リソースマップ」を参加者ひとりひとりが作っていきます。



まず、円の真ん中に「自分」を置きます。そして、右側に仕事などのパブリックな環境、左側をプライベートな環境とし、その環境で関係のある人間関係を書き出していきます。上は現在、下は過去で、中心からの距離は物理的な距離を表しています。自分が持っている人的リソースを図式化することで、例えば「プレイベートな資源が多すぎて、その関係維持に疲れているな」とか、「関係性の強い人が物理的に近くにいるな」など、自身の人的リソースの状態を把握することができます。書き出した後は、ペアになって、参加者同士でシェアしました。



感想
お互いのことを密に伝え合い、お互いに理解し合っているお二人の姿がとても印象的でした。自分自身を知り、それを周囲と伝え合うことの大切さは、誰にも共通する大切なことだと感じました。昨日はやる気に溢れていたはずなのに、今日は何にもやる気がない、ということってありますよね。そういうときは、自分を責めてしまいがちですが、今日はそういう日なのだと受け入れることで、気持ちが楽になります。そして、それを周りに伝えれば、余計な軋轢をうむことも少なくなると思います。また、相手を大切にし、支えあっていくためには、何より自分自身を大切にすることが大事なことだと感じました。



(レポート&写真:小林大祐)