シブヤ大学

授業レポート

2018/9/4 UP

世界を食べるゼミ「かわいい国キルギス!
~羊の国のアパの手仕事~」


キルギス!

中央アジア、天山山脈の麓に位置する山に囲まれた遊牧民族が暮らす国。
この遠い異国の名前の響き!に、どこか懐かしさを覚えました。
なぜ?
その疑問は、この国の古い言い伝えを聴き、すぐ解けたのです。

「キルギス人と日本人が兄弟で、
肉が好きな者はキルギスは人となり、魚が好きな者は東に渡って日本人となった。」
顔つきも似ているし、これはかなりの信憑性もあり!想いを馳せるとワクワクが止まらなくなってきました。

さて、今回の食べるゼミはと言うと、この遠い国に暮らすキルギスの食・手工芸・文化を体感しながら学ぶという大変贅沢なものとなりました。


今回のキーワードは、
「かわいい国」。

「かわいい」ヒト・モノ・コトが溢れる国とのこと。
紹介してくださった先生は、青年海外協力隊で2年間キルギスに派遣されていたお二人、酒庭伊織先生(料理)と小谷枝薫先生(手工芸)。またキルギス協力隊仲間3名も応援に駆けつけてくださいました。
この5名から溢れでる“キルギス愛”が、小さな教室を一変させ、緑の広大な草原キルギスへと誘っていってくれたのです。




【料理 その1】


前半は酒庭先生の料理。
今日皆でチャレンジするメニューは3品です。
①ボールソック(揚げパン)
②マリーナバレーニエ(キルギス式ジャム)
③シャカラップサラダ(キルギス風トマトサラダ)

どの料理もまず酒庭先生のデモンストレーションを見てから、グループに戻り取りかかるという方式をとりました。
酒庭先生は料理手順だけでなく、その料理にまつわる生活・文化やエピソードも語ってくださるので、関心が高まり、知識も広がっていきます。



①ボールソック その1
これは、お祝いや特別な時の宴席でふるまう揚げパン。
キルギスの宴席では、お招きした人たちに対してあり余る量をふるまうことが礼儀とのこと。
ボールソックも山積みにして出し、お客様はお土産として持ち帰るそうです。
伝統的な形は菱形。けれども、最近では?型にして結婚式でふるまわれることもあるとか。
すべての材料を入れてこねたら、発酵を30分~1時間ほどし、約2倍に膨れるのを待ちます。

②マリーナバレーニエ(キルギス式ジャム)
今回はブルーベリーからラズベリージャムへと変更。
砂糖を入れたら、弱火で15分ほどゆっくりかきまぜながら煮つめていきます。
この2品のデモが済んだら各グループでLet‘scooking!

各グループとも、ボールソックの生地作りに最初は苦戦(手についてしまって取れない!)。
先生方のアドバイスもあって徐々にまんまるになって、拍手も起こり、ジャムも美味しく煮詰まりました。


【休憩~キルギスのスライドとクイズ】
さて、発酵を待っている間にと、先生方がキルギスのスライドを見ながらのティーブレイクを準備してくださいました。

用意してくださったのは、キルギスのお茶会で定番のお菓子。
お菓子は全部キルギス製ではなく同じ旧ソ連のウクライナ製もあり、どれも現地では量り売りなのだそう。
意外にもどれも甘さ控えめ。色とりどりの「かわいい!」イラストにホッコリ。



キルギス国民はパンが大好き!という事でポピュラーなナン(パン)も紹介してくださいました。
本日は、埼玉県春日部市でキルギス出身の職人さんが焼いている本場の味のナンをお取り寄せとのことで、
モチモチとした食感にうっすら塩味。形も「かわいい!」と大好評。

キルギスのスライドでは、自然・文化などを数多く紹介くださり、この国に対する想いがどんどんと深まっていきます。
今回のテーマにもある「アパ」は「おばあちゃん」の意味。血縁関係のおばあちゃんだけでなく、出会ったばかりの人にも親しみをこめて「アパ」と話しかけるそう。
クイズでは、「写真に写っている9人中、何人がキルギス人で、何人が日本人でしょうか?」と言う、両国民の顔つきが似ていることがよく感じられる問題も。その他、女子高生の制服クイズなど、どれも楽しく文化を学ぶことが出来ました。




【料理 その2】

③シャカラップサラダ(キルギス風トマトサラダ)
トマトと玉ねぎとディルを切ってまぜ、塩コショウの味をしみ込ませる。シンプルだけとハーブが
アクセントとなる美味なサラダ。
今日はディルの代わりにイタリアンパセリを使いました。イタリアンパセリもキルギスでよく使うとのこと。

①ボールソック その2
さて、2倍に膨らんだ生地を、麺棒で5mmほどに伸ばして4センチ位の菱形にして、ふくらんできつね色になるまで揚げる作業へ突入。
皆で順番に伸ばす!→切る!→揚げる!を行いました。
各グループでの個性が出たのが、各家庭の味みたいで何とも面白い! 中には三つ編みを作る
アイデア満載のグループも!


盛り付けやテーブルセッティングがほぼ終わった頃に新たなサプライスが。先生方によるキルギスの民族楽器演奏が始まりました!



曲名は「アルトゥンバラルク♪」
「黄金の少年時代」という意味だそうです。
杏の木で作られているという三絃楽器コムズから奏でられる優しく澄んだ音色に癒されました。


【手芸 ~ フェルトボール~】
さて、美味しいランチタイムの後は手芸タイムです。



遊牧民の国でもあるキルギスは、また羊の国。
この羊毛・フェルトを使って作る帽子や服、手工芸品が数多くあるとのこと。
本日は、その1つ、フェルトボールづくりを体験します。
先生は、小谷枝薫先生。キルギスの民族衣装がとても似合っていて「かわいい!」。

フェルト手芸には、ニードル針で刺していく方法と石鹸水で固める方法があるそうですが、今回は初心者でも安全・簡単にできる後者を体験することになりました。」
羊毛にもキューティクルがあるそうで、それに刺激を与え絡ませて固めていく方法とのこと。
今回はアルミホイルを丸めた芯を入れて作ります。
そこに、色とりどりの羊毛を自分のセンスで巻き付けていきます。
この色づくりが楽しい!


次に使うのが何と!いわゆるガチャガチャの外身の丸いケース。
ここに薄い石鹸水を入れる→羊毛を巻き付けたボールを入れる→しっかり閉めたら、ひたすらシャカシャカ振る!振る!振る!
(このシャカシャカ振る作業がストレス発散につながるという効果があることも体感!)
ドキドキしながら開けてみると、中からま~るいボールが「こんにちは~」してくれるから、
我子のごとく愛しくって、これまたかわいい!
そして、またアルミホイルを丸める、羊毛を巻き付ける~シャカシャカの繰り返し。
「こう巻くと地球みたいに出来ますよ」「その組み合わせ素敵ですね」「こうして皆で作業すると楽しいですね」などなど、グループトークもま~るく盛り上がっていきました。



授業のラストは、先ほどの続きのスライド紹介と質疑応答。
本当に多くの質問が寄せられました。
キルギスと言う遠くて近い国、いつか必ず行ったみたい!と思ったのは私だけではなかったようです。

「国際交流も大切だけど民際交流はもっと大事。海外の知人・友達を得ると、その国のことが心配になる。その国と争いたくなくなるでしょう。」と語ってくれた友の事を思い出した一日となりました。


(レポート:大谷蓮壽、写真:竹原 舞)