授業レポート

2018/7/26 UP

ひとを読む
-ヒューマンライブラリー入門講座-

皆さんは「ヒューマンライブラリー」という言葉をご存知ですか?
生きた人間を「本」に見立て、「本」と対話する催しのことだそうです。
今回は5名の「本」役の方に来ていただき、ヒューマンライブラリーを実際に体験しました。
先生は「ヒューマンライブラリーの伝道師」の異名を持つ坪井健先生。
体験後、ヒューマンライブラリーの歴史と効果について講義をしていただきました。

■ヒューマンライブラリーとは

・社会で「マイノリティ」と呼ばれる方々=「本」役
・お話をうかがう私たち=「読者」役
・主催者=「司書」役
「本」の方1名と「読者」が円形に座り、30分間の対話をします。今回は「読者」5名ほどでお話をうかがいましたが、「読者」3名ほどが距離感としてはベストだそうです。
決まりは「『本』を意図的に傷つけないこと」。話をする内容に決まりはなく、皆さん素直な想いや疑問を話されていました。

ヒューマンライブラリーのはじまりは、2000年にデンマークで開催されたロックフェスティバルの中の企画。特別な知識などがなくても、気軽に参加できる催しなのですね。
2008年頃から日本でも行われるようになり、以後ヒューマンライブラリーのイベントや大学祭、お寺などでも開催されています。

■ヒューマンライブラリーの魅力

①顔を見て話すことで、紙の本を読んだだけではわからない想いが伝わること
本を読んだり頭の中で1人考え込んだりするよりも、実際に話を聞きに行ったり実物を見たりする方が理解が深まった経験、皆さんにもありませんか?
今回ヒューマンライブラリーを体験していただいた方から、「紙の本ではわからない想いを知ることができた」という感想をいただきました。

先生によると、ヒューマンライブラリーにおいて、共通する目標に向かい対等かつ親密な接触を行うことは、偏見を低減させる効果があるそうです。
病などについての事実を知るだけでなく、ヒューマンライブラリーを通じて実際にその病と闘ってきた方の想いや人生に触れることで、1人ひとりの市民や社会の中にある偏見を低減できるかもしれないと感じました。

②自分を見つめ直すきっかけになること
これは「本」役の方の感想だそうですが、私は「読者」にとっても言えることであると感じました。「本」役の方の生き方や考えを知ることを通じ、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけとなったと感じています。

「本」役の方から「生きる希望や勇気」に繋がったという声もあるそうです。ヒューマンライブラリーは「読者」にとっても「本」役の方にとっても有意義なものなのですね。
先生によると、意外と大切なものが「本の控室」。ヒューマンライブラリーではこれを「書庫」と呼ぶそうですが、「本」役の方同士も他の「本」について関心が高く、話が弾むそうです。

③異質性に寛容な社会へと導くことができること
今回の授業を通じ「寛容」という言葉を多く耳にしました。「ヒューマンライブラリーが偏見を低減し、市民が異質性に寛容になれるのではないか」、「障害者が社会にもっと受け入れられれば社会に寛容性がでるのではないか」…。
ヒューマンライブラリーが浸透することで、様々な方にとって暮らしやすい社会へ向かっていくことができるかもしれません。

④人が集まればどこでもできること
ヒューマンライブラリーに特別な道具は必要ありません。芝生の上で行われた例もあるとか。
先生によると、図書館で毎週「今週の本」のような形で様々な「本」の方のお話を聞けるようになることが理想だそうです。

印象的だったのは、「マイノリティと呼ばれる方でなくとも『本』役になりうるのではないか」という議論。
先生によれば、国際理解に焦点を当てたものや、「本」役としてちょっと変わった趣味を持った方たちを招くもの、「働く」をテーマにしたものなど、実際にヒューマンライブラリーも多様化してきているそうです。
気軽に行うことができ、かつ誰でも「本」になりうる。ヒューマンライブラリーは、学びや交流の場で幅広く応用可能であり、これからさらに浸透していく可能性を秘めていると感じました。

■私の「学び」―皆同じ人間であること―

「健常者」、「障害者」…。それぞれのくくりの中で語られてしまいがちですが、皆同じ人間であり、夢や悩みを持つのも同じ。どんな人でも「完全な健常はない」という「本」役の方のお言葉を聞いたり、「本」役の方と笑い合ったりすることで、心の中の隔たりが消えていったように感じました。

皆さんも、ヒューマンライブラリーを通じて誰かの人生を「読んで」みませんか?

(レポート:西分静香、写真:清水大輔)