授業レポート

2018/7/12 UP

ミネルバ大学の講義を体験しよう!
〜高等教育の未来〜

「ミネルバ大学」という名前を聞いたことがある人はどれくらいいるでしょうか?
教育関係の仕事に就いている人であれば耳にしたことがあるかもしれませんが、おそらくそれ以外の方はあまり聞いたことのない大学名だと思います。(レポートの筆者自身も、これまで耳にしたことのない大学名でした。)
元Snapfish社長 Ben Nelsonにより2014年9月に設立された同大学には、毎年世界中から多くの入学志願が寄せられ、合格率は世界で最も低いと言われる2%未満です。設立して間もない大学にも関わらず、何故、このように世界中から入学志願が寄せられるのか。今回のシブヤ大学の授業では、ミネルバ大学に日本人として初めて入学した日原翔さんを講師に招き、同大学の特徴の一つ「アクティブラーニング」を体験しました。また、他の大学に類を見ない同大学のコンセプトや運営スタイルについても教えていただきました。


■ミネルバ大学の特徴

ミネルバ大学は、全寮制のアメリカの私立大学です。学生は1年次に住むサンフランシスコに始まり、4年間で世界7都市に移り住みながら、オンラインで授業を受講します。
「何故、設立年がまだ10年も経っていないにも関わらず世界中から入学希望があるのか?」このような疑問を持つ人がいるかと思いますが、その答えは、他の大学にはないミネルバ大学の特徴にあると思います。具体的には同大学には以下の特徴があります。

【ミネルバ大学の特徴】
① 講義は、全てオンラインによるアクティブラーニング※により実施される。講義を受ける
場所は、特定されておらず、インターネット接続環境と講義に集中できる場所であれば、どこでも受講可能
② 世界から集う学生が全寮制で学びあう。(授業はオンラインであり特定の場所で行わない、オフラインでの学生同士の交流を重視している)
③ 4年間で世界7都市をめぐる(サンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北)
④ 学生は各地でインターンシップに参加する。(インターンシップでの同大学の学生の評価は極めて高い)
⑤ 学費は、米トップクラスの大学の1/4~1/3(ハーバード大学:約$46,000⇔ミネルバ大学:約$13,000)
⑥ 広大なキャンパスや図書館、ジム等の設備を排除し、教員人件費と学習プラットフォームにリソースを全て割いている。
⑦ 合格率は2%未満とされ、世界で最も合格率の低い大学とも言われている

上記の特徴を見て、従来の大学とは大きく異なる形式の大学であることが分かるかと思います。
※アクティブラーニングとは、学習者である生徒が受動的となってしまう授業を行うのではなく、能動的に学ぶことができるような授業を行う学習方法です。 生徒が能動的に学ぶことによって「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」
(2012年8月中央教育審議会答申)


■ミネルバ大学の授業スタイル

次に、同大学の授業スタイルについて簡単に説明します。ミネルバ大学の学生は一日に二コマの授業を受けます。授業の参加者は20名以下で、事前課題学習が必須となるセミナー形式で行われます。同大学は「Active Learning Form」と呼ばれる独自の学習プラットフォームを開発し、そのフォームにより授業を展開する。このプラットフォームでの授業は、以下のような特徴があります。

① 教師は、授業テーマのファシリテーションと学生のパフォーマンスチェックに注力し、不必要に会話しない。(授業中に10分以上話すと警告を受ける)
② 学生同士のディスカッション、分析、グループワーク、プレゼンテーション等が展開
③ すべての授業が記録され、学生を含めて全員が授業記録の復習を容易に行うことが出来る
④ 学生のパフォーマンス・フィードバックは最短で授業後の1時間で行われる。各学生に対して、学習改善アドバイスを迅速に行える
⑤ 従来のクラスに比べ、生徒・教師間の関係がより緊密になる。

この授業スタイルは、大教室で行う従来の講義形式の授業では実施が難しいかと思います。ネット環境の技術革新が十分に行われている現代だからこそ、また同大学のコンセプトがあればこそ、実現可能なスタイルであると思われます。


■アクティブラーニングの体験学習

ミネルバ大学の簡単な説明を行いましたので、次に今回のシブヤ大学での授業の様子を記載します。
ミネルバ大学での授業同様、今回のシブヤ大学での授業でも、参加者には事前課題が与えられております。それは、ミネルバ大学の特徴やアクティブラーニングに関する記事を読み、日原先生の設定した課題に回答するというものです。当日の授業では、開始時に日原先生が短い自己紹介をした後、早速に授業が開始されました。(前述の「①教師は、授業テーマのファシリテーションと学生のパフォーマンスチェックに注力し、不必要に会話しない。」というスタイルを踏襲した授業でした)  

授業では、設定した課題に対して参加者が一人ひとり回答するもの、また同じテーブルの人で相談してグループで回答するものとありました。どちらの場合も、日原先生がランダムに参加者を指名し、参加者は即座に自身の考えを回答していました。リアルタイムで行われる本授業は非常に緊張感があり、あっという間に時間が経っていくような感じがしました。参加者の年代はまちまちで、教育関係の仕事に従事すると思われる方もいれば、現役の高校生もおりましたが、授業に臨むその姿勢は真剣そのものでした。回答の中には、参加者だけでなく日原先生も舌を巻くような鋭い意見もあり、参加者の授業に対する真摯な姿勢が非常によく感じられました。


■日原先生よりミネルバ大学について

授業の最後には、日原先生よりミネルバ大学のことを少し紹介していただきました。日原先生曰く、ミネルバ大学の設立時のコンセプトは、「どうすれば新しく且つ効果的な高等教育を一から提供できるか?」というもので、同時に「既存のシステムの中で考える人では世界を変えるような斬新な考えは生み出しにくい。従来には無い、全く新しい考えを持ち、世界を変えていけるような人材を生み出すため、違うアプローチで教育を提供しよう」というものだそうです。そのために同大学では、以下の4つを重視しているとのことです。

1.Global Experience:世界を旅し、様々な価値観のある文化に触れながら学んでいく
2.Practical Knowledge:理論で終わるのではなく、学んだことをどう実践していくかを重視
3.Active Learning: 能動的に学ぶ授業を展開
4.International Accessibility:一つの国の学生だけでなく世界中のトップクラス学生と学ぶ

ミネルバ大学はアメリカの大学ですが、現在、学生の8割はアメリカ国外からの留学生であり、これらの学生が世界7つの都市に移り住みながら、様々な企業でインターンシップに参加します。地域によっては未だに男女差別の激しいインドや、先進国ドイツでのインターンシップを経て、これまで自身が経験したのとは全く異なる文化に触れて学んでいくそうです。このようなカリキュラムは、同大学の運営スタイルだからこそ提供していけるものだと感じました。同大学の学生は、そうした経験を経て、真に人間が暮らしやすい社会はどのようなものかを考え、それぞれの地域・文化に適合する最適なソリューションを考えて実行していけるのだと思います。


■終わりに

今回の授業では、ミネルバ大学の特徴の一つであるアクティブラーニングを体験し、また同大学のコンセプトや運営スタイルを通してこれからの大学教育の在り方を考えました。授業を通して感じたのですが、同大学のような授業スタイルやコンセプトは、多種多様な人種・宗教観・考え方などが入り混じる現代社会において、とても効果的なのだと思います。同大学と同じようなスタイルの大学がこれから新たに設立されるかもしれません。また、既存の大学も、ミネルバ大学のようにActive LearningやGlobal Experienceを重視する姿勢になってきていると思います。学生にとって大学で学ぶとはどういうことか、今後、日本の大学教育がより良いものになっていくにはどうすれば良いかなど、じっくり考える機会を与えていただいた良い授業でした。


レポート:勅使河原亮介、写真:中村隆

(参照資料)
https://wired.jp/2015/01/31/minerva-project/
http://univ-journal.jp/column/20153183/
http://cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/06/14-2-04.pdf
http://agora-web.jp/archives/1670199.html
http://agora-web.jp/archives/1670227.html
https://education-career.jp/magazine/data-report/2016/activelearning