シブヤ大学

学生特典があるお店 詳細

山陽堂〜表参道の交差点、いろんな「わ」が集まる本屋さん〜

山陽堂〜表参道の交差点、いろんな「わ」が集まる本屋さん〜

住所:東京都港区北青山3-5-22
TEL:03-3401-1309
営業時間:10:00~19:30
(土曜日:11:00~17:00)
定休日:日曜日・祝祭日

学生特典:
遠山さんに表参道の昔話を聞くことが出来ます!!

表参道駅前、ひときわ眼を引く壁画の建物。 シンボリックなこの場所に、 創業122年目の本屋さん「山陽堂」があります。 2011年6月に2階と3階をギャラリーに改装して再オープンしました。 取材に応じてくださった遠山さんは 思わず「・・・お母さん!!」と呼びたくなる様な温かい方。 人生相談までしてしまい、なんと、インタビューは4時間近くに! 少し長い記事になりますが、 取材で感じた温かい空気が、少しでも伝わればと思います。 ■そうすべき時に決断する、という覚悟 −−本屋さんがご実家って、かなり羨ましいです!! 小さい頃から”ここを継ぐぞ!”といった気持ちだったのでしょうか? 「実は、小さい頃は本が好きじゃなかったし、 40歳ぐらいまでこのお店もなりゆきでやってたんです。 家族経営なので中学2年生から店番をやっていて、すごく嫌でしたね。 月曜日〜土曜日は、16:30までに店に帰らなければいけなくて、 デートも部活もできませんでした。 表参道っていう土地柄、個性的な人が多くって、それも緊張しました。 今となっては、小さい頃から面白い人たちに会えたって、すごくいい事だったなあと思うんですが。 長女だったこともあり、 手伝わなければならない、というプレッシャーはありました。 でも、父は本当にやりたいことをやらせてくれました。 海外に行かせてくれたのが良かったのかもしれない。 10カ所くらい旅行をしました。 お金も無かったし英語もそんなにしゃべれなかったんですが、 色んな人が助けてくれたおかげで、旅ができた。 景色の綺麗さもそうですが、一番は人の温かさが印象に残っていて。 外国の方は、自分の国に迎えている感覚が強いのかもしれないですね。 来てくれる人を大切にするっていうのは、そこで学んだのかな、と思います。 その後の父の死、バブル崩壊後の配達再開、“ギャラリーのある本屋”に姿を変えること・・・ 迷いと決断の繰り返しでした。」 --すごい!確かに決断の連続ですね。 大変な事やしんどい事がいっぱいある中で、 どういうふうに自分を変えていこう?って そのとき、そのときで、きちんと考えられている感じがします。 ■話、輪、和・・・色んな”わ”が集まるように –−ギャラリーができたのは最近ですが、 ギャラリーを作ろうと思ったきっかけは何ですか? 「毎日が忙しくって、ただお店をやっていくってことだけで いっぱいいっぱいな時期がありました。 コンビニに本棚ができたり、 ネットで本を買えるようになってからは本当に大変で。 半径600mは自転車で配達をしたり 飛び込みで営業に回ったりと、必死でした。 でも、山陽堂を続けていくには、このままじゃあダメだ、 この場所を活かして、人が集まる場所をつくろうと思ったんです。 すごく悩んだんですが、家族で相談して、 本当に”腹をくくる”って感じで決断しました。 やる前にコンセプトを決めたんですが、”わ”にしました。 話、輪、和・・・色んな”わ”が集まるように、といった意味です。 動き出したら風が吹いたっていう感覚で、 ホームページ作りは甥の知り合いが、 展示の企画は昔からのお客様や出版社さんが、というように色んな方に助けられてここまで来ました。」 ■山陽堂の入り口が、”にじり口”みたいになれたら -−今までの展示がこのようなつながりっていうのは、 山陽堂さんならでは、という感じがすごくします。 展示をやっていく中で感じた事を教えてください。 「”表参道のヤッコさん”という展示では、 ヤッコさんを招いてイベントもやりました。 そのとき、”通りかかって偶然イベントを知って、 かっこいい大人に会いたかったので来ました” って言ってくれた大学生がいたんです。 ああ、すごく良かったなあと思って。 “本気の大人”を求める若者と“素敵な大人”をつなぐきっかけができて、うれしかったです。」 −−ヤッコさんとの近さや、場の居やすさもいいなあと 思いました。 ”こんなこと言ったら変に思われる”といった、 発言者の遠慮がなく、周りも見守る温かい雰囲気というか。 「ありがとうございます。 ヤッコさんのお人柄が一番だと思うんですが、 あるお客さんが、山陽堂の入り口は”にじり口”みたいだって 言ってくれたのを思い出しました。 お茶室の小さな出入り口のことを、にじり口って言うんですが、 身分や地位が高い人でも一度頭を下げて入るように、 武士が刀を持ったまま入れないようにっていう設計なんです。 それと同じように、山陽堂に入ってきてくれた人が、 どんな人でも同じ目線で話ができるっていう場所であればいいなあ と思っています。」 ■"本を買いたくなる空気”を作りたい −−「街の本屋さん」って、そういうところがいいですね。 小さな本屋さんならではの、やりがいや大変さを教えてください。 「小さい本屋には、ベストセラーになるような"売れる本”がなかなか入ってこないんですよ。 『1Q84』も発売当日の配本もほんの数セット。 売り場にある本の数は大型書店にはかなわないし、 ネットで買ったほうが速いっていうのは、厳しい現実です。 じゃあ、うちはどうしていけばよいか。 ライバルにもなれないし、ということで“本を買いたくなる空気”を作ろうと思ったんです。 ”ここはおしゃべり本屋だね”ってこの前お客さんに言われたんですけど、 お客さんの顔が見えるのは、やっぱりすごくいいなあと思います。 思いがけない人に会ったり、本を入り口にして話が広がったり、 毎日1つはいい事があるんですよね。 そうすると、頑張って続けようって思えます。 あ、もちろん静かに本を探したい方も居るでしょうから お邪魔はしません。安心していらしてください。」 ■ここは、色んなことが起こる交差点 –−”人”を大切にされている本屋さんだなあ、 という感じがすごくするのですが、最近だと、どんな方が来ましたか? 「今日はこの本が気分だなあと思って、 書棚のレイアウトを変えた日があったんです。 そしたら、その30分後、一番前に出したばかりの本に眼をとめた女性が ”これ父の本なんです、よく見える位置にありがとうございます” っておっしゃって。 こんな偶然あるの、っていうタイミングでびっくりしました。 この場所は色んなことが起こります。」 −−すごい!ドラマの様な展開が! 「そうなんですよ。本当に感動するような事が起こる。 ご近所の96歳のおばあちゃんによく来てもらっていたんですが、 引っ越す事になってしまって。 もう来てくださらないかなと思っていたら、 ”ヘルパーさんと一緒に本を買いにきたよ、 山陽堂さんじゃなきゃ、本を買えないじゃない”って来て下さったんです。」 −−本を買い行くって言う事と、お店の人に会いにいくって言う事は その方にとってセットなんですね。 ■表参道のお母さんに、会いにいこう −−今日は本当に感動するようなお話が聞けました。 表参道に来たときは、また遊びにきます! 「是非どうぞ!そうそう、ここは駅からすぐの場所ということもあり、 よく外国の方が道を聞きにいらっしゃるんですよ。 そのときに渡せる地図があればなあと思っています。 シブヤ大学さん、一緒にやってくれませんか? 旅行する方の不安が少しでも解消できればいいなと。」 −−いいですね! 是非やりましょう! ・・・それからも話は尽きず、様々な事を話しました。 人生の決断、仕事と恋愛、現代の子育ての難しさ、 震災で変わった事、時代の空気、表参道のこれから・・・ 最近考えていたけど、こんな話していいのかな? といった事も自然と話せてしまう雰囲気があり、 勝手ながら、”表参道のお母さん”みたいだなあと感じていました。 ここには書けなかったこともたくさんあるので、 是非遠山さんとお話をしてみてください。 本との出会いに加えて、 遠山さんの知識の深さ、 たくさんの日々の気付きに、 はっとするものがあると思います。 (取材/撮影:花輪むつ美)