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スルタンの象(2006年)

2006年にロンドンで行われたロワイヤル・ド・リュクスによる公演「スルタンの象」
”The Sultans Elephant – Final Day” by Fimb (CC BY)

海外では、公共空間と人々が楽しげに交錯している風景がよく見られます。伊藤さんが紹介してくださった「ロワイヤル・ド・リュクス」による都市を舞台にした大きな人形の物語や、アヴィニョン演劇祭の街角で行われる大道芸やパフォーマンスが行われています。日本の都市は広場が少なく、道路が多いので、なかなかそうした空間を日常的に感じることはできません。恵比寿盆踊り大会や渋谷ズンチャカ!は、ロータリーや路上、公園などを使ってそうした風景を生み出していこうという試みであり、まちと人が交歓するためのソフトウェアといえるでしょう。

同時に、こうしたソフトウェアを稼働させるための都市空間はどうあったらいいのでしょうか。現在、渋谷駅周辺では大規模な開発が進んでいます。東浦さんが紹介してくださった渋谷駅周辺の開発計画は、これからソフトウェアとハードウェアを合わせて考えていく段階に来ているのだそうです。
佐藤さんが紹介してくれたヘルシンキのリハーサルハウスは、公園の一角にあり、劇場で行われるオペラや演奏会などのリハーサル用のこぢんまりとした施設で、中でリハーサルを聴くこともでき、公園に向かって扉を開いて行うこともできるのだそうです。佐藤さんは、渋谷にもリハーサルハウスをつくりたいそうです。また、渋谷駅周辺の開発中の工事現場も活用できるのではないかと提案されました。

都市想像会議第二回 会場風景

会場風景

会場からは、「実際にまちなかでタップダンスなどをしたい場合にはどうしたらいいか」という質問がありました。この質問者のように個人でまちを使ってなにかを行う際にどこにどう話をつければよいのかわからない人が多いと思います。また、イベントでも都市空間をどのように使えるのかについては、決まった手順があるわけではありません。都市を使いたいと思う人々と使う場所の間に入れる中間的組織、市民の声をうまく拾い上げながら企画を行うキュレーター的な役割も含めた、新しい仕組みが必要ではないかという意見も出ました。

最後に会場から質問されたのが、冒頭にあげた「祭りとイベントはどこが違うのか」ということでした。伊藤さんがいわれたように、「おもしろかった! ハイ、次!」という消費的な消えものではなく、日常の振る舞いが少し変わってくるようなものを目指すことが大事ではないかという指摘にははっとさせられました。祭りはいわば日常に想像力と創造力をもたらす“装置”ではないでしょうか。ちょうどハロウィーンの仮装をした人たちが渋谷に集まる映像がニュースでも流れました。ひとりひとりの創造性を発揮する機会として新たな祭りのようなものとも言えるかもしれません。まちの側としても、こうした多様な人々の創造性が発揮できるような、そんな新しい空間も必要とされているのかもしれません。

より詳細な内容は議事録をご覧ください

都市想像会議第二回 参加メンバー

テーブル右手前から、左京泰明、佐藤雅樹、東浦亮典、伊藤香織、紫牟田伸子。後方は参加してくださったみなさん