シブヤ大学

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キャンパスライフ

イラスト
佐藤隆俊さん

FILE.13

佐藤隆俊さん

(授業コーディネーター)

“「生徒の第一号」として
知らない世界に触れられる。
それを他の人と共有してくのが
コーディネーターの醍醐味です。”

本業はフリーのカメラマン。だけど週に2日はシブヤ大学に関わっている。“親瓶(おやびん)”の愛称で親しまれる佐藤隆俊さんは、
生徒としての参加をきっかけに先生となり、現在では授業コーディネーターとして活躍している「シブ大的出世魚」。そんな親瓶さんに、シブ大に関わる理由についてお聞きしました。

Q:

授業コーディネーターになった経緯を教えてください。

佐藤:

No1.jpg 始まりは蓄音機についての授業で先生になったことだったんです。生徒としてシブ大の常連になって、スタッフやボランティアの人たちと仲良くなりますよね。それで自分が蓄音機を好きで、蓄音機コンサートなんてことをしているって話をしたら、運営スタッフの近藤ナオさんから「それ授業でやってくださいよ」って言われて。で、授業をやった後にスタッフの反省会でも蓄音機で聞いてもらったら、スタッフの
一人が頭を突っ込みそうなぐらいに聞き入っちゃって、エディット・ピアフがすごく良かったって言っていて。じゃ今度はピアフだけで何かできないかなって企画を提案したら、教室の手配から全部やってみませんかって言われたんだよね。で、青山に「青い部屋」っていうシャンソンのライブハウスがあるので、どうせならそこでピアフを蘇らせたいと思って、飛び込みで話をしに行ったの。そしたら土曜日の15時くらいに撤収するならタダで貸してくれるって話になって。第二回目は音楽評論家の湯浅学さんを先生に迎えて、ピアフとビリーホリディを掛けて時代背景も話してもらうっていう企画書を作って。つまり気づいたら授業コーディネートの仕事をしてたわけ。それでこんな面白いことができるんだ、って思ったんですね。


Q:

授業コーディネーターの面白さや、喜びって何ですか?

佐藤:

No2.jpg いちばん嬉しいのは授業が面白かったって感想を生徒さんから聞けることですね。それと「こういうのは授業になりませんかね」って相談してくれること。
たとえばシブ大の授業内容の補講サークル「シブ補」で知り合った人が即興演劇の劇団のファンで、面白いから授業にしてほしいって公演に誘われたんです。で、まあ、自分が行って観て、話を聞かなければ面白さがわからないですよね。それで観てみたら意外と面白いなと思ったりする。誰かが紹介してくれると、自分のテリトリーの外にあった面白いものに出会うチャンスを得るわけですよ。そういう出会いは他の人にとっても面白いと思うんです。
こないだの5月にはメガネ、レンズメーカーのHOYAさんの協賛で「メガネを生活視力で考える」っていう授業をやったんです。その授業をやったきっかけも、シブ大の他の授業で出会った人から「メガネについての授業をやってほしい」って話をされたことなんですけど。それでHOYAの方に、一緒に授業をやりませんか、って提案をしたんです。
で、話をしに行ったら、40代向けの眼鏡教室はやっているけれど、若い人はメガネが嫌でコンタクトにしてしまうから、若者に向けてはやってませんって言われたのね。実際、HOYAでニーズが高いのが遠近両用眼鏡とか老眼鏡とかリーディンググラスだから、そういう年代の人たちに向けての講座はあるし、資料もある。けど、実はそれしかない。じゃ、若い人に"メガネはいいぞ、楽しいぞ"という気持ちで積極的に使ってもらえる仕掛けを考えよう、という話になりました。それで打ち合わせを重ねるうちに、「ビジョンパワーレシオ」っていうことばが出てきたんです。モノを視るには脳にパワーをかけないとよく見えない。そのパワーの大きさを「レシオ」って、比率みたいなので表現するっていう考え方で。お、これはいいぞと。
「視る」ってことと「見える」ってことは全然違うんだって話に落とし込もうって思ったんです。メガネは自分に関係ないって思っている人でも「目」は使っているわけだから、「視る」っていうテーマなら興味を持つでしょ。そしたら、より多くの人たちが興味を持つところに達せるわけじゃん。先生にとってもプラスになるだろうし、それまで「メガネ」に興味を向けていなかった人にとってはもっとプラスになると思う。たまたま授業を受けてみたら意外と自分に関係なくもないんだって発見したり。そういう気づきをもたらせるといいよねって思う。
感覚や五感っていうのはみんなに関わることだから、そこに話をつなげれば誰にでも通じると思うのね。形而上哲学や経済学なんかも一見難しそうだけど、その時代、その場所にいた人たちが「何を思って」行動していたのかってところまで話を落とし込めば、すごく伝わるわけ。それで生徒さんのココロのいちばん響くところに触れたときに、ああ、やっぱ良かったって思うわけですよ。


Q:

授業をつくるときに、大事だと思うものは何ですか?

佐藤:

No3.jpg 自分の好奇心ですかね。授業コーディネーターは、授業を行う先生と密にやりとりをして授業を組み立てていくのですが、先生が伝えようとしていることの何が面白いのか、自分が「生徒の第一号」になっていちばんよく理解することが大切なんです。先生候補の人が打ち合わせで100の内容を出してきて、そのうちの30ぐらいが授業になるなって思ったとする。でも100の話ができるってことは、その裏側に1000とか2000もの引き出しを持っているんですね。だから最初の30の何を面白いと思ったのかとか、先生が伝えたいことの本質を理解しながら、さらにどんな引き出しがあるかを探って、面白いことを引っ張り出していくんです。
「いちばんめの生徒」として先生に共感できるぐらいその世界を追求していくことが大事だし面白いし、さらにそこから好奇心を刺激するものに出会えることが面白いなって思っています。

プロフィール:佐藤隆俊さん(さとうたかとし)

1953年兵庫県宝塚市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。現在は練馬区にて佐藤写真工房を主宰するカメラマン。トレードマークはメガネと帽子、一眼レフ。ちなみにメガネデビューは30歳ごろで、帽子はつねに10種類以上のレパートリーをキープしている。

(2009/09/24 | インタビュー 松本典子 |撮影 北村麻那美 他)